イムデベ!

個人的偏見と傾向による映画・音楽・本紹介&レポ

『美女と野獣』についての雑学(3)

ものすごく長くなってしまった。

なかなか最新版に話が辿りつかないので、たぶん辿りついたときには息切れしている(私が)。

さて、コクトー版の次はディズニーのアニメ映画版だから、ずいぶんと映像化の間が空くことになる。

まあ、コクトー版が凄かったからね…

というわけで、正直、アニメ映画版は観てません。

観てないものをあれこれいうのは私の流儀ではないので、ここはすっとばして、次の2015年公開、クリストフ・ガンズ監督による『美女と野獣』に一気に飛ぶ。

 

クリストフ・ガンズ監督は私の大好きな監督トップ5に入る…入るよね、適当に言っちゃうけど、入るんですよ、監督さんで、何がすごいってその寡作っぷり、マニアっぷり、変態っぷり、そしてオタンビ。完全にぶっとんだオタンビ。ガンズのオタンビはガンズにしか作れない、そんな特異なオタンビ監督であります。

どのくらい佳作かっていうと、まず長編デビュー作が「クライング・フリーマン」。1995年の作品。知る人ぞ知る、日本漫画の有名作品が原作。コレがとんでもないマニア向け作品で語ると長いから、今回は語らない。

2作目が「ジェヴォーダンの獣」。これは大傑作。前に語ったかもしれない。語ってなければ今すぐ語りたいくらいの大傑作だけどマニア向け。2001年。フランス人が新大陸から連れてきたインディアンと義兄弟になって獣を退治するというアクション快作。インディアン役のマーク・ダカスコスがフンドシ一丁で美しく舞う姿は最早伝説。

3作目が「サイレント・ヒル」。同名ゲームの映画化で、ゲーマーたちから熱狂的名支持を得たマニア向け作品。ゲーマーたちからは「神!神降臨!」と呼ばれた作品なれど、続編作る気無しで放置。これが2006年。

5年に一度くらいしか映画作らないってどういうことだと憤る固定ファン(私)

映画監督引退しちゃったの?と心配する新規ゲームファン。

そんな我々のやきもきを他所に4作目が2015年の『美女と野獣』…10年近く開いてんじゃねえか、働けよ!(怒)

まあ、そんなわけで何でしれっと『美女と野獣』なんだろうなーなんて思いつつ、まあガンズ先生だから好きだよね、当然好きだよねってファンは思ったわけです。

野獣大好きだもんね!(そっちだよ)

美女部分はガンズ先生、変態なんであんま興味ないんですよ。知ってる。

泥まみれにしたりするのは好きだけど、そういうのだけだよね。知ってる。

そんなガンズ先生が、ほっぺを赤くしながら(かわいい)「原点に戻るんだよ!原作の原作!超長いやつの方!」とか語ってて、こっちは本当の原作知らないんで、これがいったい原作に沿ってるのかどうか全くわからないんですけど、ガンズ版は野獣が野獣になった理由がきっちりしっかり語られています(他の部分は概ねコクトー版と同じだけど、野獣が婚約者と同じ顔になるというコクトーオリジナル部分は無し)。

城の王(ヴァンサン・カッセル!)は美しい妻と幸せに暮らしていたが、ただひとつの悪癖が狩猟だった。彼は美しい妻の再三の頼みを無視し、森に暮らす美しい鹿を追いまわし、しまいに殺してしまう。しかし殺した鹿は実は彼の妻であった。彼は森の女神である鹿を殺した罪で野獣となり、家来たちは巨大な彫像となり、犬たちは超かわいいキャラモンスターになるのであった。

え、何それ、ガンズ先生が大好きな感じじゃん…

しかもラストは木々が暴れまくり枝をのばしまくり、あーこれ、ガンズ先生が大好きな触手じゃん…あ、巨人まで出ちゃうの…

というどこまでもガンズテイストな『美女と野獣

しかしまねできないオタンビも確実に繰り広げられ、コクトー版に負けるとも劣らずの美しい画面を展開。ガンズ先生の画面はとにかく赤と青が素晴らしいんだけど、そこにフランスといえば今はこの人、なレア・セドゥが美女として降臨。まさに夢の世界。

 

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美しくてエロい世界観は圧倒的。

そして二人が恋に落ちる流れの美しさよ…ガンズ先生、もっと仕事しようよ。勿体ないよ。

 

そんなこんなで大満足して映画館を出た私に、すれ違った高校生たちのおしゃべりが聞こえてきた。

「何これ、ぜんぜんちがうー」

「意味わかんなーい」

え?何が違うって?おおよそコクトー版だし、意味わかんないってどういうこと?

訝ってネッサフしてみたら、そうか、カップが喋らず、ろうそくも沈黙していたし、誰も歌をうたわなかった!!

世の中、気付かぬあいだにディズニー版が主流になっていたのだ。

というわけで次回、ようやっと今回の『美女と野獣』を。

美女と野獣についての雑学(2)

さて、『美女と野獣』の映像化、と言えば、私にとってはなんといってもジャン・コクトーの映画。

これは影響を受けてないクリエーターはいないと思うので、『美女と野獣』の映像化におけるベースと言ってもいいと思う。

ストーリーはボーモン夫人版にほぼ忠実。

この映画、何がすごいって、CGの無い時代の特殊効果、そしてそのセンス!

さすがジャン・コクトー。時代の最先端をぶっちぎってる(たぶん、今もこの人のセンスには追いついてないから真似するしかない)。

ジャン・コクトー知らないっていう人が最近増えたのでそこからいくと、元祖マルチタレントですが、本業はたぶん詩人。

15歳で詩人として認められているので、そうとう早熟。

尤もジャン・コクトーが見出したレイモン・ラディゲ(「肉体の悪魔」の著者)は17だか18だかであれを書いて20で亡くなっているので、現在よりも早熟な社会だったのかも。

とまれ、ひと昔前といっては何だけども、私の時代には小学校の教科書にコクトーの詩が載っていた。私はそれでコクトーに嵌った。

堀口大學の訳で有名なカンヌ…(ごめん正式名称忘れた)であり、たぶんコクトー知らずとも聞いたことのある人も多いのではないかな。

「私の耳は貝の殻 海の響きを懐かしむ」

これが衝撃でね。小学生にも衝撃与えるんだから凄いんだと思うんでね、是非とも今の教科書もなんだかチャラいのばっかり載せてるみたいだけど、こういうのを載せて頂きたい。というのは置いておいて、

兎に角ジャン・コクトーというのは何でもやる人で、詩以外には小説、絵、役者、そして映画などなど。

ちなみにすごいオシャレイケメンなので写真置いておきます。この人の指は長くて美しくて有名だった。かのカルティエの三連リングは彼がラディゲに贈るために作ったという噂もあり(諸説あり)、なんとあの三連リングを小指に二個かさね付けしてしまう指の長さ!

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美女と野獣』はコクトーのミューズであった当時の超イケメン俳優ジャン・マレーが主演。ジャン・マレーについてはその美しさを三島由紀夫もたたえる文章を送っているほど。

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彫刻顔で、個人的にはコクトーの方が好みのタイプ。というのは置いておいて、

とまれ、彼が野獣メイクも当然CG無い時代だから何時間もかけて特殊メイクで演じきった。

でもこの映画のいちばん凄いところは、コクトーの美意識に裏打ちされた独自のセンス!

人の腕でできた燭台、暖炉の両脇にあつらえられた動く顔、温室に据えられた動く彫像などなど、たぶん他の映像化が真似している要素がたくさんある。

どれも独特で他に類を見ず、そしてなんといっても美しい。

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ちなみにエマ・ワトソン美女と野獣に出演するにあたって、雑誌の撮影でコクトーオマージュの写真を撮っていて、なかなか素敵だった。

違う映画なんだけど、鏡に入るシーンを、床に水槽を作ってその周りを額縁で覆い、カメラを90度傾けて、その水の中に飛び込むことで映像化するという、CG抜きの幻影術!

ご興味のある方は是非、えーっと、なんだったかな、たぶん『オルフェの遺言』だと思います(なんというウロ)

ちなみに『美女と野獣』を撮影したのは当時まだ若かったアンリ・アルカン

のちに『ローマの休日』を撮影し、白黒撮影といえばこの人!という美しい画面を撮影する人でしたが、当時はまだ駆け出し。

コクトーの『美女と野獣撮影日記』では怒られている記述あり。

しかしコクトーに叩き込まれた美のセンスはみごとに開花。

『ベルリン天使の詩』の撮影もアンリ・アルカンヴィム・ヴェンダースが白黒ならどうしてもと頼み込んで実現したそうで、実に美しい天使の視点を見せてくれます(『

ベルリン天使の詩』では天使の視点はすべて白黒)。

さて、コクトー版の『美女と野獣』映像美以外にも特筆すべき点が一箇所。

それはコクトーの解釈によって原作を改変した場所で、他のどの映像化も引き継いでいない場所があること。

コクトーはよく妖精について独自の考えを書き残しているんですが、この『美女と野獣』についても、この人から野獣、野獣から人への変化を妖精のしわざととらえていて、「単純な妖精たちは、野獣が人になったときに、ベルの彼氏ならそれがいいだろうと考えた」。

だから、ベルへの求婚者(ジャン・マレーの二役)は、ベルを救おうと野獣の城に忍び込んだところを、動く彫像に射殺され、同時にベルの愛で息を吹き返した野獣はその姿に変化してしまう。

当然、ベルはその変化が気に入らない。なぜなら彼女が愛していたのは野獣であって、求婚者ではないから。けれど、彼女はそこに着地点を見出すだけの現実性を持っている。彼女はなじみの顔へ変化した野獣に、少し嫌そうな表情をしてひとこと。

「慣れなければいけないわね」

これがラスト。

いきなり現実的かつちくりとさすような台詞で終わる『美女と野獣

いかにもコクトーらしい、美しさのなかに、遊び心とおとなの冷静さが同居した世界が味わえる映画です。

ところで、この映画のフォロワーとして、Duran Duranの3名(実質2名)のスピンオフユニットArcadiaのシングル、"Election Day"のPVが素晴らしいできなので、こちらもどうぞ。たしかArcadiaのPVは基本的にコクトーリスペクトだったと思う。

www.youtube.com

全然話が進まないので、ガンズ監督版の話は次回

『美女と野獣』についての雑学(1)

2016年度版の、と言えばいいのか、それよりかはディズニー実写版と言った方がとおりがいいのか、とまれ現時点で最新の『美女と野獣』を観てきたついでに、私の人生における美女と野獣にまつわるアレコレで得た雑学というか、まあ、無駄知識なんですけど、感想代わりにおいておこうと。

映像版が何バージョンもある『美女と野獣』というのは、そもそも原作からしていささか複雑な成り立ちになっていて、ボーモン夫人版というのがいちばん世に知られている原作である。

実はその前に、えらい長い、ガチで長いバージョンがあるらしく、これが大元。

でも、一般的にはそんな長い童話があってもねえということなのか、ボーモン夫人版が原作となっている。

私はボーモン夫人版の原作しか読んでいないので、そこがベースの知識になるんですが、これがディズニー版とはとても違うので、ディズニー版しか知らないひとのためにさらっと書いておきます。さらっと、というのは今手元にない原作を確かめもせずウロ覚えで書くということです。記憶違い許して。つか気になる人は原作読んで。

 

昔、裕福な商人が3人(くらいだったか)の息子と3人の娘とパリに暮らしていた。

母は亡くなっていて(たぶん。記憶がない。いたか?いたとしても存在感は薄い)、商人と息子たちは、娘たちを甘やかしまくって大事に育てていた。

上の二人は甘やかされるがまま、傲慢な女性に育ったが、末の娘だけはまっとうに育ち、家族を大事にする良い子だったうえに、ベル(美女)ちゃんと呼ばれるほどに美しかったので、姉ふたりはこの妹を好いていなかった。

ある日、商人の船が嵐で全て難破してしまい(輸出業ってことかな)突然破産してしまった一家はパリを捨てて、田舎町に引っ込むことになった。

怒れる姉ふたりはパリでの優雅な生活を夢見て、嘆き悲しむだけ。

一方のベルちゃんは貧乏な暮らしによくなじみ、姉と父の面倒を見て、よく働き、村人たちからも親しまれる存在に。

そんなベルちゃんを兄のともだちの一人が好いているが、とうのベルちゃんはお父様のもとから離れやしませんと拒んでいた(確かそんな感じ)。

ある日、難破したと思っていた船が1隻だけ無事であったとの知らせが入り、姉は狂喜乱舞、父も喜んでさあパリに言ってくるよ、おまえたちはお土産に何が欲しい?

姉たちは当然値の張るものを頼んだが、ベルちゃんは、お父様、私は薔薇いち輪で構いません。そんなものでいいのかい、もっとおねだりしてごらんと迫る父に、薔薇いち輪と頑固なベルちゃん。

今気付いたんだが、こんなに頑強に薔薇をねだらなければ以下略。

そして父はパリに行くが、頼みの綱であった船の積荷は財産にならず(ウロ)、傷心のまま帰途についた。当然姉の頼みごとはひとつとしてかなえられず、その帰り道、迷い込んだ城で、あるじを見ぬまま、ひと晩の宿と食事を得た。

帰りに城を出るときに、そこに咲いている一輪の薔薇を見た父は、そうだベルちゃんのお願いくらいは、とその薔薇を手折った瞬間、野獣があらわれ、おれの一番大事な薔薇を(以下略)

あとはだいたい同じ(飽きた)

ちょい違うのは、えーっと、姉の妨害工作とか色々入るところかな。

あと村人が大挙して城に押し寄せたりってのもありません。

ベルちゃんがお父さんが病気なのを魔法の鏡で見て、1週間だけおうちに帰してと野獣に頼み、1週間を過ぎれば俺は死ぬことになるといわれ、もうそのときには概ねカップリングが成立していたので、もちろん戻りますともとおうちに帰るんだけども、

お姉ちゃんたちがあれやこれやと策をろうして、結局帰るのが遅れて野獣が死に掛けているのを鏡で見て慌てて帰って愛をうちあけ、野獣の魔法が解ける、そんな話です。

ちなみに、カップとかキャンドルとかは喋らない。

この原作のいいところは、毎晩野獣が、俺のことを愛しているかとたずねるんですよ。

ベルちゃんはこれさえなければ毎日が楽しいのになーなんて思いながら、いいえと答える。

この繰り返しがなんかいい。

奥ゆかしくて、しつこいようで、しつこくない的な。

すっごい長くなってきたので次回に続く。

Murder for Two@世田谷パブリックシアター 12th, June, 2016

余りによかったので、レビュー書くのが遅れるという本末転倒ですが、

 

この舞台、今年のナンバー1だから!(個人的見解)

 

松尾貴志と坂本昌行の二人舞台なんだけど、二人で演じるのが13役で、そのうち10人は坂本担当という無茶っぷり。

これ、オフブロードウェイの作品だそうで、とにかく脚本がすごくよくできている。

主演二人は演じるときもあれば、素のままの二人のときもあって、現実と虚構を行ったりきたりするのにくわえて、ひとりが10人を演じるわけだから、そのスピード感たるや、半端ない。

ストーリーは一応、ミステリー。

或る夜、パーティに集まった客たちのなか、その家の主人が殺害され、たまたま通りがかったうだつのあがらない刑事(松尾)が、犯人をつきとめようとする。

そこには大学生で犯罪心理に興味のあるステファニー(坂本)がいて協力を申し出るが、容疑者である被害者夫人(坂本)、元バレリーナ(坂本)、かわいい子供たち(坂本)が入り乱れて大変なことに…って全部坂本昌行じゃん!

 

演じ分け、完璧でした。

 

もう台詞言わなくても姿勢だけ、視線だけ、それだけで今どの役をやっているのかわかりました。

さぞかし疲れたことでしょう(いきなり同情)

でも再演して(真顔)

すっごいすっごい疲れると思うんだけど、私はこれをもう一回観たいし、

何より、今回観られなかった普通の演劇ファンの方々に観てもらいたい。

サイコで、クレイジーで、大爆笑の兎に角最高に素晴らしい作品。

 

ちなみにチケットが取れたのが千秋楽だけだったんですけど、

なかなか帰ろうとしない興奮さめやらぬ観客に対して、

数度のカーテンコールのあと、坂本くんがばたんと(セットの)扉を開けて出てきて言い放った渾身の

「以上!!」((c)厚切りジェイソン

が坂本くんのやりきった感をみごとに表してました。

拍手!

2015年総括

覚えている限りで2015年の映画,本,CD等を総括してみました.
自分用のメモみたいなものなので,非常に身勝手で率直な感想や評価をつけています.
それでもイイちうかたのみドゾ.
いつも題名と感想しか書いてなくて不親切きわまりないので、気に入ったやつには一応短いあらすじにもならない紹介文をつけてみました。



1.「ピース」ジーン・ウルフ
2.「私の大地から地球へ」セバスチャン・サルガド
3.「キャロル」パトリシア・ハイスミス

 



「ピース」は題名からは想像できないおよそピースからはかけ離れた内容で、
これどこに連れてかれるんだ!!ってなる恐怖の傑作。
いやー、深い。なぞが深すぎて、じったんばったんしているうちに
「ピース」の本当の意味が見え隠れしてくるあたり、とんでもない作品なので
驚かされたという意味で、昨年の1位。

 



「私の大地から地球へ」は写真家のサルガドの自伝ですが、
彼の生命に対する非常に深い愛や尊敬を感じることのできる内容。
サルガドの写真を知っている方には是非オススメしたいし、
サルガドの写真を知らない方には今すぐにでもサルガドの写真を
見ることをオススメしたい。



「キャロル」はハイスミス好きとしては、そんな作品を書いていたのか!と
驚いた一作。非常にハイスミスらしい、奇妙な静寂や冷たい空気の中に優しさ混入の
素晴らしい小説でした。
レズビアン小説だったのは、あ、やっぱりねという感じ。
リプリーシリーズを読んでいたときから、そうではないかと思っていた。
この小説、実際に同性愛者の人でないと書けないと思う。
独特のこの張り詰めた、けれど深い、恋愛感情は、異性間では起こり得ない(少なくとも個人的経験では)。

以下、読んだ順。


「さよなら、ブラックハウス」ピーター・メイ
思いがけずサスペンスだが(純文学だと思って買った)、しっかりとした世界観があって非常に良かった。



「もう年はとれない」ダニエル・フリードマン
元刑事のじじいが頑張っちゃう小説。
題名通りコメディタッチのハードボイルド系統で、軽く読める面白さ。



「その女アレックス」ピエール・ルメートル
スキャンダラスな表紙とあらすじで非常に売れたサスペンス。
だがしかし、この本、シリーズものの二作目なのである。
一作目から訳出して欲しい…(尚、今はこの本のヒットをうけて一作目
の邦訳が発売されているので、読む方は是非1作目から…)。
中身はフツーにサスペンスだった。サスペンス好きな人は好きなんじゃないか。



クラウドからAIへ」小林雅一
ふむふむと思いながら読んだ。
よくまとまっているので、現状までの流れ把握にいいんじゃないかと思う。
ただ、AIという言葉が最近、色んなことに使われすぎて、
若干、発散気味になっている気がする。



「失われたときのカフェで」パトリック・モディアノ
私好みの純文学。ナジャ思い出した。
この人の本いいなあ。他のも読みたい。



「百年法」山田宗樹
不老不死になった世界で、百年経ったら死ななければいけないという法律が
最初に施行されるときの人々と社会の葛藤。
発想は面白いんだけど、若干、冗長すぎた感が否めない。
話の軸があっちいったりこっちいったり落ち着かないのも気になる。

「SP」金城一紀
SPドラマのシナリオ。
欄外の金城のコメントにふーんとなることしきり。
特に田中一郎のあたり。
ドラマファンにオススメ(ドラマ観てない人は別に読んでも面白くないと思う)



「スノーグース」ポール・ギャリコ
スー・ブラックウェルの展覧会で非常に素晴らしいオブジェを見て、
そのオブジェがこの物語をベースにしていたので読んだ。
切ない話x3篇。
情景が目に浮かぶ美しさ。
なので、挿絵要らないなってちょっと思った。

「犯罪」フェルディナント・フォン・シーラッハ
非常に売れているハードカバーが文庫落ちしたので読んだ。
弁護士である著者が色々な犯罪をおかした人間の模様を描いた短編集。
さらっと読めるが、内容がまったくあとに残らない。
正直、今、メモを見て、この本を読んだことを思い出した。
ふうん、で終わったものと思われる。



「子供たちは森に消えた」ロバート・カレン
「チャイルド44」の元になった、実際のシリアルキラーの話。



「ライフレシピ」パトリス・ジュリアン
昔出した本(「物語の主人公になる方法」)に比べると随分と
地上に降りてきたなあというか、落ち着いたなあという印象。
パトリスの年齢や経験の積み重ねがそのまま現れた感じがするけど、
たぶん、前作よりこちらのほうがとっつきやすいのではないかと思う。
個人的にはよりエネルギーの高かった前作の方が好きだけど、
これもなかなか良かった。
行き詰ったときに、違うものの見方ができるのでパトリスの本は好き。

「命売ります」三島由紀夫
これはずっと発刊されてなかったのかな。
ともあれ、こういう本を書いてたんだというのが意外だったし、
思いのほか、面白かった。
サスペンスなのかな、ちょっとブラックコメディ系です。
三島由紀夫って名前でとっつきにくく感じる方にオススメしたい。

パタゴニアふたたび」ブルース・チャトウィン、ポール・セルー
二人の作家が順にパタゴニアについて書く、いわばアンソロ?
私はチャトウィンが好きなので読んだんだけど、自分が旅行しない割に
旅行記が好きだという矛盾。
とても短いので、ちょっと物足りない感もありつつ、白水社百年記念として
この本を復刊してくれたことに感謝したい。
いつも素晴らしい(だが売れない)本を出版してくれるありがたい出版社のひとつだ。

「天国でまた会おう」ピエール・ルメートル
「その女アレックス」の作者による初めての純文学ということで読んでみたが、これ…純文学か?
ありとあらゆるところが微妙で、総じて残念だった。
ストーリーテラーとしてもいまひとつだったし、この物語で伝わるものも特に無く。

映画

1.「図書館戦争2」
2.「セバスチャン・サルガド
3.「キングスマン

良い映画が沢山あったので非常に迷ったのですが、個人的な好みで



図書館戦争2」が1位!
だって、良い怪我だったんですもの(ぶっちゃけた)
というか、実際、前作がそれほど良いとは思ってなかったので
(銃撃シーンが多すぎて冗長だった)、今回もちょっと身構えてたんだけど、
非常にタイトにまとめられていて、観ていて気持ちがよかった。
原作からの変更点も「上手い!」と思わず手を叩くような部分だったし。
是非とも、3作目、実現して欲しい。

セバスチャン・サルガド」はヴィム・ヴェンダースの映画で(とはいえ、
ほとんどの部分をサルガドの息子が監督している共同監督作品ではあるが)
写真家セバスチャン・サルガドの写真がどのように撮られ、どう変わっていき、
それが地球規模のプロジェクトに発展していく過程を非常に変わった手法で
描いている作品。
恥ずかしながら、サルガド、知らなかったんですが、大ファンになりました。
写真って2次元だと思ってたんですが、この人の写真には動きや音や匂いまでもが
感じられます。
本のところにも書いたけど、是非、写真を見てほしいです。



キングスマン」は、映画のできがどうこうというよりも、コリン・ファースという
我々イギリスマニアにとっては隠し球というか、なんというか、だった彼が
一般に認知どころか爆発的な人気になった記念碑的な作品なので3位。
もうちょっとマイケル・ケイン様も活躍させて欲しかったというのと、
エグジー演じるタロン・エガートンのルックス(顔も体も)がイマイチなのとが
減点かなー。
やたらにディスられている最後の方のバカバカしさは私的には良かった。


次点に「TED2」!
期待を裏切らないぬいぐるまーに優しい映画だった~。
TEDはかわいいなー。ほんとにかわいいなー。
観てると涙が出てくるよ…
ぬいぐるまーのためのぬいぐるまーによる映画だと思う。
あと、ヒロインが変わってアマンダ・セイフライドになったのも嬉しい。

以下、観た順。

「マエストロ!」
小品というか…かわいい作品ですね。
ただ、これ、ドラマスペシャルくらいのアレなんじゃないかな。

ガンダム THE ORIGIN 1」
ガンダム THE ORIGIN 2」
文句なしの傑作!3が待ち遠しい。
ガンダムファンならぜったい観るべし!

「ジュピター」
大コケ映画。
「マトリクス3」からコケ続けていたウォシャウスキー兄弟が「クラウド・アトラス」でみごと復活!と喜んでいたが、そうか、あれは共同監督だったトム・ティクヴァの力によるところが大きかったか…。
「マトリクス3」も嵌った「風呂敷広げてあとはイメージ映像と独りよがり」の罠にがっつり落ちた結果、ぽかーん、なできばえに。
映像もさして驚くべきところはなし。


ラン・オールナイト
殺し屋の父親が息子を救うため、命をかける話。
というシンプルなアクションサスペンスに見せかけておいて、
非常に深い良い映画だった。
父親の元雇い主に対する敬愛の情。
その元雇い主の息子を正当防衛で殺してしまったかたぎの息子への愛情。
元雇い主の父親に対する友情。
ボンクラ息子であっても抱く愛情。
これが複雑に絡み合って、切ない。実に切ない!
父親を演じたリーアム・ニーソンと、元雇い主を演じたエド・ハリス
全部持ってっちゃうんじゃないかと思ったところに投入された
とびきりカッコイイ息子役のジョエル・キナマン
わかってる。この映画製作者、わかってるよ!


「マッド・マックス 怒りのデス・ロード」
まさか、この私が、マッドマックスだいっきらいな私が、
マッド・マックスを映画館に観に行く日が来るとは…
しかも大傑作だった。
信じられないような大傑作だった。
見終わったあと、
イモータンジョー、イモータンジョー!プシューッッ!!!
って叫ばずにはいられなかった。
観てなかたった妹にきちがい扱いされたが妹も観に行ったあと、
V8!V8!V8!
って叫んでた。
それがマッド・マックス!
主役の影、薄い?
薄いんじゃない。他が濃すぎるんだ!


「予告犯」
ドラマ「ウロボロス」で生田斗真の狂気を帯びた目つきにやられて、これは是非ほかの役も見てみたいと思った次第。
したがって、ほぼ期待してない状態、どうせサブカル的な何かでしょ、と思って行ったのが間違いでした。
思わぬ号泣。
非常に良い映画だった。
ネタバレしてしまうと勿体ないからストーリーには触れないでおくけど、
生きる意味とか、本当の優しさとか、色々考えさせられたし、
やっぱり生田の目つきは狂気に満ちてた。すごく優しい狂気だった。
いつまでも心に残る作品だし、人に勧めたい映画。


チャイルド44
既に原作を数年前に読んでいたのだが、十分サスペンスとしてドキドキハラハラさせられる映画になっていた。
ソビエト連邦、誰もが疑い合い、探り合っている息の詰まるような社会で生きる主人公捜査官が、幼児誘拐事件が連続殺人であることに気付いてしまったがために、大変な苦境に立たされる(当時はソビエト連邦というユートピアで犯罪なぞあり得ないことになっていた)。
ストーリーが進むにつれ、閉塞感が増し、逃げ場が無くなっていく焦燥感に、胃がきりきりする思いを味わわされる。
とはいえ、原作とは違い、映画には救いがある。
それはゲイリー!ゲイリー!ゲイリーがいればもうあとはどうでもいいじゃん!(待て待て待て)
主役のトム・ハーディが器用貧乏な主人公にぴったり。
あと、悪役のキナマン、実によい美貌でした。ナイスキャスティング

進撃の巨人」(前編)
ワーストオブワースト(笑)
これだけ凄いダメ映画を作れたことに敬意を表し、後編は観なかった。
演出は古臭く、バカバカしく、鳥肌モノで、脚本は爆笑モノ。
戦闘シーンは三浦春馬の運動能力をまったく活かさず、
そもそも貧しい暮らしをしていたはずのヒロインが、
なぜかオフホワイトのローゲージのニットワンピを着ている冒頭で失笑。
よくこんな酷い映画を作れたものです。

ジュラシックワールド
動物の相手させたら世界一のクリス・プラット。恐竜相手でもOK!(笑)
最後の最後までハイヒールで走り回るダラス・ハワードにスカッとした。
良作。

ジョン・ウィック
凄い評判がよかったのでコンスタンティンくらいのインパクトを期待してしまった。
そうでもなかった。


「Pan」
まったく期待しないで行ったが素晴らしく良かった。
非情に面白いし、ワクワクドキドキする映画なのでだれかれ構わずオススメしたい。

グラスホッパー
すっげつまんなかった。
なんかもうどうしようもなかった。
役者陣は良かったんだけどねえ…脚本?原作は面白いらしいから。
あ、シリアルキラー役の山田涼介はもうちょい頑張らないと
自己満足感が透けてみえてたぞ……

DVD / TV


永遠の0
えー、正直な話、パッケージを開けたら泣くんじゃねーかくらいの
思い入れで、買ったものの、まだ開いてません。
TVでやってたから観て泣いた…


ウロボロス」(連続ドラマ)
やばかったね!!思わずDVDボックス買っちゃったもんね!
これ以上は望めないというラストまでのストーリー展開と
怪我につぐ怪我!
これまでさしてなんとも思っていなかった生田斗真ファンになった。



「ブラザーズ・ブルーム」
映画館で見逃したのでDVDで鑑賞。
てっきりブロディ演じる兄弟が結婚式に出る映画だと思っていたら全然違った。
兄弟の詐欺師の話でした。
コレね、兄弟モエ属性の人は必見!もうすごいから!ほんとすごいから!
勿体ないから中身については完全に伏せます。
知らないで観たほうがいい。今すぐ観たほうがいい。

漫画

※巻数が書いていないものは最新巻


「お伽もよう綾にしき」ひかわきょうこ
この人の描く男性は理想だよ…



図書館戦争」弓きいろ(全巻)
ベタな少女漫画の絵柄ですが、戦闘シーンはきっちりしてて、
まさに図書館戦争の世界。



白暮のクロニクルゆうきまさみ
これすっごい面白いんですが、周りで読んでいる人がいない感じ。なぜ。
実写化されそーな感じもする。

「でぃすxコミ」(1)ゆうきまさみ
o(´^`)o ウー、コレは違うー、感じがした。

「マッチ売り」草間さかえ
ときどきBLでストレス発散しようとして失敗する。
ふつーのBLはあんましもえないのだとそのたび思う。

「東京心中」トウテムポール(1)~(5)
すっげいい感じのBLだったんだけど、だんだん話が深くなるにつれ以下略。

覆面系ノイズ福山リョウコ
だんだん話がループし始めてきたぞ…

聖☆おにいさん中村光
面白い…んだと思う。

「鉄楽テトラ」佐原ミズ
絵が好きでつい買ってしまうのだが、この人の漫画を面白いと思ったことがない。

高台家の人々」森本梢(1)~最新巻
思いのほか面白い。
主人公のなんかズレた妄想が、いい。

アルスラーン戦記荒川弘
絵、上手いよね…でもこの話、原作本が終わってないって聞いてちょっと恐怖感じてる。

「今日は会社休みます」藤村真理(1)~最新巻
ストレスが絶好調に達すると読んでしまう系のイタ女性コミック。
案の定イタイタしさに崩落れた。
本当に誰もかれもが結婚を焦っている、そんな世界があるのか?
有る意味究極のファンタジー

「楽園くん(仮)」中村明日美子
…BL。



血界戦線内藤泰弘
好き!!



スティグマタ」高橋秀武
コレ、すっごい良かったの!!
設定も斬新だし、キャラも全員立ってるしで、
なぜか既に打ち切りって聞いて泣くしかない。
怪我好きの人は是非。

「Black Line」(1)水瀬チホ
つまんなかった。

「ねこまた」琥狗ハヤテ
かわいい。



「ユレカ」黒沢要
すっごい好きなBL!!
1巻しかないのが残念至極。
枯れた絵柄も好み~。



「ある日木曜会で」寺島らて
夏目のところに集まる文士たちの朴訥とした日常が楽しい。

宝石の国市川春子
設定がどうのとか置いておいて、なんか好き。
絵も、雰囲気も、なんかよくわかんないテンポも。

セキセイインコ」全巻 和久井健
めっさ面白かったのにいきなり打ち切りラストってどういうことよ!!(怒)
だから少年漫画は怖いわ…

「Orange」(1)~(4)高野苺
未来の自分から手紙が届くというSFファンタジー設定なんだけど、
基本ユル設定だし、青春まっしぐらな感じでカワイイ。

Cocoon今日マチ子
沖縄戦を描いた漫画。
物凄く怖くてトラウマになるので誰にも勧めない。

「GANGSTA」コースケ
話が進むよーで進まないループに入ってきましたよ…

GANGSTA:CURSED」鴨修平
……

「U」今日マチ子
クローン人間の話。すっげ怖い。トラウマになるので誰にも勧めない。

「あかやあかしやあやかしの」七生
読んだらしいが覚えがない。



「ゴースト・レディ」(上下巻) 藤田 和日郎
ナイチンゲールと劇場に現われるゴースト「灰色の男」をからめた冒険+伝記モノ。
流石のストーリーテリング

「合葬」杉浦日向子
彰義隊の話を全然知らなかったので、非常に勉強になったが、
怖いのでトラウマになる。

「三月のライオン」羽海野チカ
非常に面白いんだけど、はちくろの件があるから最終話まで安心はできない。

「或るアホウの一生」トウテムポール
「東京心中」シリーズは面白いけどコレは……



「Jの総て」全巻+番外編 中村明日美子
これ、すごい好き!!
同級生より好きかもしれない!
アナカンに代表されるエゲレス美青年好きな人は是非!

CD

おそろしいことに買ったCDのメモを一切付けていませんでした…
何を買ったんでしょうねえ(遠い目)
とりあえず、V6の新作は全部買ったはずです。。。
というわけで、



「Timeless」V6 初回限定生産A、B、通常版
最早3種買うことに躊躇いがない(笑)
20周年記念第一弾シングル。
第一弾しかなかった(遠い目)
非常に良い曲だった。
どれかひとつ買うとしてお勧めは初回のB。
スポットライトのMVとメイキング入りDVDがみんな楽しそうでイイ。
観客が入っているのが気に入らないという方は初回のA。
通常版は2曲多いけど、そのうちBreak Outは、まあまあで、
Roadshowはつまんないからお勧めしない。



「SUPER Very best」V6 初回限定生産A,B、通常版、限定受注生産版
…悔いはない。
「Wait for you」という素晴らしい楽曲をこのベストアルバムのボーナストラック
にするのはいかがなものかと思った。

あ、そっか。iTunesに取り込んだ日時で判断しよう。

「NIPPON」椎名林檎
iTunesで1曲買い。紅白で聞いたら素晴らしかったので。



Hello WorldBump of Chicken
血界戦線のテーマソング。素晴らしかったので。
しかしカップリングの「コロニー」がこれまた名曲で、
うっかりアルバムも買いそうになったが、他の曲聴いたらだいたい同じなので
まあいいか的に。



「Ban All the Music」Nothing but Thieves
コレは久々にあたりだなと思えるバンドが出てきた。
なかなか面白いので今後に期待。

これだけ…?怖いな。V6の20周年ってのもありますけど、
実際のところ、MUSEがアルバムツアーで日本をたぶん初めてスルーしたので
ヘソを曲げたってのもあります。ファック。

ライヴ

2Cellos
サントリーホールにて、クラシックコンサートのみ。
ロックコンサートは今回またしてもオーチャードだったのでスルー。
クラシックコンサート、とても気楽に美しい音楽にひたれる場として
非常に素晴らしかったので、是非今後もやって欲しい。

V6
20周年アニバーサリーコンサートにして初体験のV6コン。
お友達との協力のおかげで、争奪戦のなか、なんとか横アリ2回、代々木1回
合計3回行くことができました。
席もサイドスタンド、正面スタンド、アリーナ、とくまなく楽しめて良かったです。
初V6、初ジャニーズですよ。
すっげ楽しかったし、カッコ良かった!!
毎年やってほしいなあ…。

舞台
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「針とアヘン」
世田谷パブリックシアター
ジャン・コクトーマイルス・デイヴィスへのオマージュ。
ロベール・ルパージュという人が演出している有名な舞台とのことで、
圧巻のひとこと。
舞台にいったい何が起きているのかわからない、完全な異次元空間に
引き込まれること必須。
演者はひとり、舞台中央に据えられた四方を壁に囲まれたボックスの
中につりさげられた状態で、時々刻々と変わるボックスのなかの空間、
入れ替わる上下左右で、コクトーとデイヴィスの幻影を追い続ける。
機会があったら是非観てもらいたい舞台。

イベント

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「スー・ブラックウェル展」

ポーラ美術館で、入場無料で行っていた小さな展覧会なれど、
これが実に素晴らしかった。
スー・ブラックウェルは海外では非常に名前を知られているらしく、
本の中の世界を本を使って実体化する芸術家。
何を言っているかわからないと思うので、興味のあるかたは
画像検索してみてください。
私は本のところに書いたけど、ポール・ギャリコのスノーグースが気に入っています。
もっと大きな展覧会を開いて欲しい。

全般とおして、いまひとつの収穫だったのがCDかなあ。
まあ、いじけてたのが大きいです。MUSEざけんな。さっさと来い。
V6コンに行けたのが非常に嬉しかったし、楽しかったし、
それからスー・ブラックウェルという芸術家、ロベール・ルパージュという演出家、
そして何よりセバスチャン・サルガドという写真家を知ることができた良い1年だった。

バットマンVSスーパーマン “Batman vs Superman: Dawn of Justice” 2016 US directed by Zack Snyder

アメコミというのは日本のコミックとは随分と事情が違っていて、たとえば同じ漫画を違う漫画家が描いたり、違う漫画のキャラクターが出てきたり、というのは普通にあることらしい。

 

したがって、スーパーマンが活躍しているニューヨークのすぐ傍にゴッサムシティが出没し、ゴッサムシティで活躍するヒーローであるバットマンが、いきなりやってきた正義の宇宙人にジェラシー覚えるなんてことも起きてしまう。そんなストーリー。

 

そう、コレ、ジェラシーの話なんだよ(笑)

 

トレイラーを観たときは、なんかすごく嫌なことがあって、スーパーマンが暴れちゃうのかなーってちょっと思ったんだけど、全然そんなことはなくて、スーパーマンはちゃんとスーパーマンで、正義にまい進する実直な宇宙人だった。

ハンサムだし。

彼女もいる。

言うことなしだよね。

 

一方のバットマンは最初からちょっと病んでるし、そもそもがゴッサムで相手にしていた連中もスケアクロウやらジョーカーやら、病んでるやつらばっかしだし、彼女はいないし……しかも実際、スーツの中はフツーの人間なので、満身創痍。

あ、なんだか可哀想。

 

だから、スーパーマンにジェラっちゃって、ちょっとディスったりして頑張ってみるんだけど、結局のところ、スーパーマンのピュアっぷりに、あ、ごめんなさい、ってなっちゃう。そんなショボンぶりが最高にいい。

 

こんな風に書くとただのしょんぼりコメディになっちゃうんだけど、そこはザック・シュナイダー監督。

かつてはスパルタ兵を率いた男。

がっつりアクション、ど迫力シーン満載でカッコ良く描いてくれちゃう、この気持ち良さ!

 

いいよねえ、ヘンリー・カヴィル

スーパーマンにぴったり。

クラシカルな美貌だし、眼鏡のときと、スーパーマンのときの落差が、クリストファー・リーブ同様、ちゃんとあるし。

あと少し泣きそうな顔をするのが凄く母性本能をくすぐるタイプなので、こてんぱんにされているシーンなんて一部マニア(私のことか)に大うけ間違いなし。

さすが、ザック先生、わかっていらっしゃる。

 

ヘンリー・カヴィル、初めて観たのはターセム監督の大失敗作「イモータルズ」(ターセムは大丈夫なのか?)だったんだけど、このときはまだもっさりしてた。

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#短い前髪が致命的に似合わないのではないだろうか…

 

そこから、ザック先生にしごかれ、みるみる輝きだして、「UNCLE」では完璧な美貌で、ハンサムだってだけで出てきたヒュー・グラントと並んでひけを取らない美しさで、イギリス!イギリス!!

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スーパーマンはまた「UNCLE」とは違った種類の、どちらかといえば朴訥とした感じのただようカワイイ系。すごいハンサムなのに引き出し色々ありそう。

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ベン・アフレックは正直、嫌いだったんだけど、今回は良かったね!

いやー、だってさ、「デアデビル」なんか酷かったじゃないですか。

体はもっさりしてるし、顔ももっさりしてるし、何より、悪役のコリン・ファレルの方がカッコ良すぎて全部持ってかれちゃったという…あの映画大好きで何度も観てるんですよ。コリン・ファレルのところだけ。

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#強烈すぎて誰も勝てなかったファレルのブルズアイ

 

それが、年取って、なんか疲れた風情を漂わせるようになって、俄然良くなったじゃないですか!

ヨッ!疲れた会社経営者!!(酷)

 

 

そしてこの映画なんといっても出色だったのが、ジェレミー・アイアンズ演じる執事アルフレッド!

 

やっぱりね、ノーラン監督のバットマンが最高すぎたわけじゃないですか。

金持ちオーラばっきばきにだしつつ、背中に影しょってる役やらせたら右に出るものはいない(多分)クリスチャン・ベールを主演において、その屋敷に君臨するマイケル・ケイン様のアルフレッドなんてパーフェクトすぎて、どうすんの、もう誰にもこのフィールド踏み込めない!って状態だった。

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#坊ちゃまに甘々の執事王、ケインアルフレッド様。

 

そこにザックが持ち込んだのが疲れたビジネスマン風情のブルース+すさんだ執事のアルフレッド。この組合わせ絶妙すぎる!

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#優しさの欠片もないどころかいっそ狂気

 

アイアンズの荒み感が抜群。

ブルース坊ちゃまをひたすら過保護にするケイン様とはひとあじもふたあじも違う。

もう、愛情注ぐってよりは、酒注いでる感じ。

見守っているんじゃなくて、ちょっと通りすがりに手助けしてるって感じ。

ご主人さまに対するぞんざいさが半端ない。

ピンチになっているご主人さまに掛けることばが「ちょっと見たら大変なことに」

彼女持ちでピュアピュアなスーパーマンにががーんとなってるご主人さまに掛けることばが「あなたにも大切な人が…できないでしょうけど」

挙句の果てにはご主人様が秘蔵の酒を飲んだと文句をたれる。

ご主人様は命を懸けて、なんか無駄に戦ってるっぽいのに!

 

いい。凄くいい。

この組合わせで是非とも続けて頂きたい。

もちろん、甘やかされないアフレックバットマンの世界にはゲイリー・オールドマン演じるゴードン警部なんてご褒美アイテムも用意されていないのだ。

 

かわいそう・・・・・・

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#史上最高のご褒美キャラ

 

だいたいのことはゲイリーがいれば我慢できるのに(疑うなら「チャイルド44」を観てみるといい。あの死ぬほど救われない原作がそこそこ救いのある映画になったのはゲイリーがいるからだ)それすら与えられず、アイアンズ様に働き馬のように扱われ、従業員からは愚痴られ、スーパーマンからはピュアピュアオーラで天然ボケぶっこかれ、そしてワンダーウーマンからはさげすみの目で見られる。そんなアフレックバットマンが大好きだ。

 

とか言いつつ、眼で追っちゃうのはヘンリー・カヴィルとアイアンズ様なんですけど。

仕方ない。

人は美しい者に眼をひかれるのだ。

続編、全力で楽しみにしてます。

フォーエバー・プラッド 28th May, 2016@東京グローブ座 4 & 5th May, 2016@KAAT

 オフ・ブロードウェイのミュージカルで2013年に日本版で公演、今回、全く同じキャストで再演となった舞台を、千秋楽を含む3回観てきました。

 

 男性四人のボーカルグループが、初めての大きな舞台を踏むことになって、誂えたスーツを取りに行くとき事故に遭い、全員死んでしまう。そんな彼らがよみがえって、ひと晩かぎりのライヴショーを行うというとても変わった設定のミュージカル。

 ミュージカルと言っても、台詞を歌うことは一切なくて、観客は彼らのライヴショーを観に来た観客ということになるから、感覚としてはライヴに近い。登場人物も四人だけだし(あとは演奏するバンドだけ)。

 しばしば観客に話しかけたり、舞台にあげたりもする観客巻き込み系で、アドリブもちょいちょい混ざってるとても気軽に楽しめる作品でした。

 

 構成も、一夜限りのライヴショーという限定された時間と空間に、彼らの生前の思い出だとか、歌に対する思いだとか、切なさがきれいに織り込まれていて、実に絶妙。飽きさせない。

 特に終盤のエド・サリヴァンショーの部分は抱腹絶倒の大騒ぎで、4人しかいないなんて信じられないほどのバラエティに富んだシーンを繰り広げてました。何回観ても爆笑。

 

 歌も素晴らしかったなあ。明るい歌から、ラブソング、労働歌まで、幅広くて、それをどれも実に楽しげに生き生きと歌い上げてくれるから、聞いていてとても気持ちが良くて、ずっと笑顔でいられました。これは癒し舞台……。

 

 キャスト四人がまた絶妙な配役で、元気いっぱいなんだけどぜんそく持ちのフランキーに川平慈英、派手でカッコつけでちょっといい加減なスパーキーに松岡充、スパーキーの異母兄弟(って言ってたけど設定的には親の連れ子同士なのでは…)ですぐに鼻血が出ちゃうビクビクビックルなジンクスに長野博、そして胃痛持ちで神経質なスマッジに鈴木壮麻。

 

 失礼ながら、私、壮麻さんって存じ上げてなくて、この四人のなかで唯一、知らないキャストだったんですけど、声を聞いた瞬間に、なにごとー!!?ってなりました。

 とんでもない美声。聞けば劇団四季にいらしたとのことで、アンコールのフリートークでも、この後にもう3つくらい舞台の台本が届いているという超売れっ子さん。

 身のこなしも美しく、しかもハンサム。聞いてないよって感じのハンサム。それでいてコメディセンスも抜群で、ハンサムなのに、観客を笑い死にさせかけたのは間違いなくこの方です。

 

 みんなそれぞれ役柄にぴったり、というか、役柄を演じるのにぴったりでしたね。

 川平さんの小さな身体から発散するエネルギーの大きさはフランキーそのものだったし、松岡くんのライブステージで磨かれた歌い方のカッコ良さはやっぱ役者さんとは一線を画する感じだったし。長野くんはおどおどしているふりが上手!(笑)いや、だって、V6でおどおどしてるの観たことないもん(むしろ一番どっしりしてる)。でも、そこは流石のアイドルパワーで、かわいくみせる技に長けてらっしゃる。すっごいかわいかった。なんか果てしないかわいさを観た。

 ちなみに踊りもいつもと全然違ってて、わざとぎこちなくしてたんだろうけど、時折キレッキレの仕草が出ちゃってて、それもまたかわいかった。もう何でもかわいいよ!

 あと、転び技やらせたら本当に上手いよね、長野くん。On The Townでもびっくりしたんだけど、今回も階段でのずっこけシーンがあって、すごい自然なのね。ビートたけしより自然だよね。どこで身に着けた技なんだ、あれは。

 まあそれはどうでもいいんだ。

 

 今回約3年ぶりの再演となりましたが、これは数年おきに是非とも、是非とも、同じキャストで再演してほしいなあ。プラッズたちが帰ってくるのを観客も心から待っているヨ~!