バットマンVSスーパーマン “Batman vs Superman: Dawn of Justice” 2016 US directed by Zack Snyder
アメコミというのは日本のコミックとは随分と事情が違っていて、たとえば同じ漫画を違う漫画家が描いたり、違う漫画のキャラクターが出てきたり、というのは普通にあることらしい。
したがって、スーパーマンが活躍しているニューヨークのすぐ傍にゴッサムシティが出没し、ゴッサムシティで活躍するヒーローであるバットマンが、いきなりやってきた正義の宇宙人にジェラシー覚えるなんてことも起きてしまう。そんなストーリー。
そう、コレ、ジェラシーの話なんだよ(笑)
トレイラーを観たときは、なんかすごく嫌なことがあって、スーパーマンが暴れちゃうのかなーってちょっと思ったんだけど、全然そんなことはなくて、スーパーマンはちゃんとスーパーマンで、正義にまい進する実直な宇宙人だった。
ハンサムだし。
彼女もいる。
言うことなしだよね。
一方のバットマンは最初からちょっと病んでるし、そもそもがゴッサムで相手にしていた連中もスケアクロウやらジョーカーやら、病んでるやつらばっかしだし、彼女はいないし……しかも実際、スーツの中はフツーの人間なので、満身創痍。
あ、なんだか可哀想。
だから、スーパーマンにジェラっちゃって、ちょっとディスったりして頑張ってみるんだけど、結局のところ、スーパーマンのピュアっぷりに、あ、ごめんなさい、ってなっちゃう。そんなショボンぶりが最高にいい。
こんな風に書くとただのしょんぼりコメディになっちゃうんだけど、そこはザック・シュナイダー監督。
かつてはスパルタ兵を率いた男。
がっつりアクション、ど迫力シーン満載でカッコ良く描いてくれちゃう、この気持ち良さ!
いいよねえ、ヘンリー・カヴィル。
スーパーマンにぴったり。
クラシカルな美貌だし、眼鏡のときと、スーパーマンのときの落差が、クリストファー・リーブ同様、ちゃんとあるし。
あと少し泣きそうな顔をするのが凄く母性本能をくすぐるタイプなので、こてんぱんにされているシーンなんて一部マニア(私のことか)に大うけ間違いなし。
さすが、ザック先生、わかっていらっしゃる。
ヘンリー・カヴィル、初めて観たのはターセム監督の大失敗作「イモータルズ」(ターセムは大丈夫なのか?)だったんだけど、このときはまだもっさりしてた。
#短い前髪が致命的に似合わないのではないだろうか…
そこから、ザック先生にしごかれ、みるみる輝きだして、「UNCLE」では完璧な美貌で、ハンサムだってだけで出てきたヒュー・グラントと並んでひけを取らない美しさで、イギリス!イギリス!!
スーパーマンはまた「UNCLE」とは違った種類の、どちらかといえば朴訥とした感じのただようカワイイ系。すごいハンサムなのに引き出し色々ありそう。
ベン・アフレックは正直、嫌いだったんだけど、今回は良かったね!
いやー、だってさ、「デアデビル」なんか酷かったじゃないですか。
体はもっさりしてるし、顔ももっさりしてるし、何より、悪役のコリン・ファレルの方がカッコ良すぎて全部持ってかれちゃったという…あの映画大好きで何度も観てるんですよ。コリン・ファレルのところだけ。
#強烈すぎて誰も勝てなかったファレルのブルズアイ
それが、年取って、なんか疲れた風情を漂わせるようになって、俄然良くなったじゃないですか!
ヨッ!疲れた会社経営者!!(酷)
そしてこの映画なんといっても出色だったのが、ジェレミー・アイアンズ演じる執事アルフレッド!
やっぱりね、ノーラン監督のバットマンが最高すぎたわけじゃないですか。
金持ちオーラばっきばきにだしつつ、背中に影しょってる役やらせたら右に出るものはいない(多分)クリスチャン・ベールを主演において、その屋敷に君臨するマイケル・ケイン様のアルフレッドなんてパーフェクトすぎて、どうすんの、もう誰にもこのフィールド踏み込めない!って状態だった。
#坊ちゃまに甘々の執事王、ケインアルフレッド様。
そこにザックが持ち込んだのが疲れたビジネスマン風情のブルース+すさんだ執事のアルフレッド。この組合わせ絶妙すぎる!
#優しさの欠片もないどころかいっそ狂気
アイアンズの荒み感が抜群。
ブルース坊ちゃまをひたすら過保護にするケイン様とはひとあじもふたあじも違う。
もう、愛情注ぐってよりは、酒注いでる感じ。
見守っているんじゃなくて、ちょっと通りすがりに手助けしてるって感じ。
ご主人さまに対するぞんざいさが半端ない。
ピンチになっているご主人さまに掛けることばが「ちょっと見たら大変なことに」
彼女持ちでピュアピュアなスーパーマンにががーんとなってるご主人さまに掛けることばが「あなたにも大切な人が…できないでしょうけど」
挙句の果てにはご主人様が秘蔵の酒を飲んだと文句をたれる。
ご主人様は命を懸けて、なんか無駄に戦ってるっぽいのに!
いい。凄くいい。
この組合わせで是非とも続けて頂きたい。
もちろん、甘やかされないアフレック版バットマンの世界にはゲイリー・オールドマン演じるゴードン警部なんてご褒美アイテムも用意されていないのだ。
かわいそう・・・・・・
#史上最高のご褒美キャラ
だいたいのことはゲイリーがいれば我慢できるのに(疑うなら「チャイルド44」を観てみるといい。あの死ぬほど救われない原作がそこそこ救いのある映画になったのはゲイリーがいるからだ)それすら与えられず、アイアンズ様に働き馬のように扱われ、従業員からは愚痴られ、スーパーマンからはピュアピュアオーラで天然ボケぶっこかれ、そしてワンダーウーマンからはさげすみの目で見られる。そんなアフレック版バットマンが大好きだ。
とか言いつつ、眼で追っちゃうのはヘンリー・カヴィルとアイアンズ様なんですけど。
仕方ない。
人は美しい者に眼をひかれるのだ。
続編、全力で楽しみにしてます。