イムデベ!

個人的偏見と傾向による映画・音楽・本紹介&レポ

美女と野獣 "Beauty and the Beast" 2017 US/UK directed by Bill Condon

エマ・ワトソン主演、共演がルーク・エヴァンスユアン・マクレガー、そしてサー・イアンということで非常に楽しみにしていたんですが、非のうちどころのないファミリー映画だった、というかもっと端的に言えばディズニー映画だった。

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悪くないよ。

でも残念ながらそれほど良くもない。

最初から最後まで歌あり、涙あり、笑いありで楽しめること請け合いなんだけれども、もうちょっと、もうちょっとのところで、子供向け的な安っぽさを払拭できなかった感がある。

俳優人は概ねイギリス人なんだが、監督がアメリカ人。

だからなのかなあ。ポップコーンムービー以上にはならなかった。

設定がかなり違うのも気になった。姉がいないってこの話には大きい要素だと思う。ろくでもない姉や兄がいるからこそのベルちゃんなんですよ。

つまり一人っ子で、お父さんに「生きてくれ」と言って人質に取られるというのが、いまひとつしっくりこない感があるのね。

姉や兄がいるならば(それがどんなにろくでなしだろうと)自分がいなくてもお父さんは生きていけると思うかもしれない。

でも、この子一人っ子なんだよね。

あの状況で父の代わりに私が犠牲に、と身代わりを申し出るのは、優しさよりも利己的な頑固さを感じてしまった。

それから、彼女が野獣と恋に落ちる過程が唐突すぎてしっくり来ない。

野獣が本をくれたり(もともとベルちゃんが貧しい設定だから本がない!)、喋る家具や食器があなたさえウンと言ってくれれば私たちが人間に戻れると嘆きながら、優しくしてくれたり……これで好きになるっていってもストックホルムシンドローム的なものがありませんか。大丈夫ですか、ベルちゃん。

尤もベルちゃんは、ルーク・エヴァンス演じるガストンを袖にするくらいなので、多分大丈夫。

ガストンは素晴らしくガストンだった。ルーク・エヴァンスというのは非常に利口な顔をしている人なので、こういうバカなハンサム役ができるとはあまり思ってなかった。

歌も実に美しく…イギリスの俳優さんは芸達者ですな。

そういやルフウがガストンにほれてるゲイ設定がどうのこうのって問題になっていて、ロシアだかどこだかで上映禁止になったって聞いたんだけど、全然そんな感じなかったな…

アレでゲイがどうのこうのなんて言ってたら他の映画のが凄くないか。XMENとかXMENとかXMENだけど。

エマ・ワトソンは涙が出るほど美しかった!彼女は良いキャリアを選んだなあと思う。もう彼女をハーマイオニーといちいち結びつける人はいないだろう。とても知的で美しい女性に育った。

この映画で泣けるシーンはふたつ。

エマ・ワトソンの美しいドレス姿(黄色のやつ…というかほぼ黄色のドレス以外のドレスアップが無い)。

・野獣の悲しい歌。

ふたつあればめっけものくらい、常にハイテンション、ハイスピードな映画だったので…もうちょい情緒ってものはないのか。

タンビはなくてもいいけど、情緒ってものは。

ユアンとサー・イアンの掛け合いは最高だったけどさ、やっぱり、食事くらいゆっくり食わせてくれと思わざるを得なかった。デザートしかたぶん食わせてもらえなかった。

考えてみれば、この映画、全員ろくなものを食べていない。

コクトー版とガンズ版は食事が豪華なので、これが米英と仏の違いかねえ…。

もうちょい、もうちょい、色んなところで重厚さが欲しかった!というのがこの映画にたいする一番の感想。

つまり、監督が失敗。どんなにいい俳優揃えても、結局、監督が大事。