ダンケルク "Dunkirk" 2017 UK, etc. directed by Christopher Nolan
第二次世界大戦時、ドイツ軍によってフランスの海岸線「ダンケルク」に追い詰められた総勢40万のイギリス・フランス両群をイギリス軍と民間ピーポーが救出に向かった実話をもとにしたノーラン先生の大作映画。
ざっくりまとめりゃ究極の閉塞感ムービー。
海に追い詰められるということは果てしなく広い海岸線で船を待つぎゅうぎゅうの列に並び、これまた人でぎゅうぎゅうのはしけを無理やりわたり、そして船底でぎゅうぎゅう詰めになり、挙句の果てには魚雷にやられて、0スタート。
一方の救出に向かう民間船の小さいことこの上ない。だだっぴろい海のうえで、頼りないというより、こりゃあかんだろって大きさの船の上をがんがん戦闘機が飛んでいく。撃たれたらいっぱつアウトの空間に閉じ込められているのは父子と息子の友人、そして途中で拾ったイギリス兵だ。
大空を飛ぶ飛行機では物凄く小さなコクピットに閉じ込められたパイロットたちが一瞬一瞬に命を掛けている。
この設定だけで息苦しくなるような閉塞感じゃないですか。
海岸は広く、海も広く、空も広いのに、三者三様に閉じ込められているわけですよ。この設定が(実話だけど切り取り方が)ノーランらしい秀逸さ。
加えて、お得意の時間軸トリックも発揮して、海岸でのタイムラインは1週間、民間船のタイムラインは1日、飛行機でのタイムラインは1時間となっている。
すなわち、それぞれの場所に点在する主人公たちの時間軸はずれているので、今、このとき、彼らがどの状態にあるのかというのは後半、彼らの時間軸が交差するときまで観客に知らされない。
さすがノーラン先生、クレバーだぜ…
とは思うんですけど!
ただね、ちょっとね、不親切が過ぎるっていうか、もうちょっと字を大きくしようよ!
1.1 week
って画面に出るんですけど、ダンケルクの海をバックにね、見えにくいから。
灰色の海とか港バックに白文字、見えにくいから。
多分、あれに気付いてない人多いと思うんですよ。
そうすっと当然、2からになっちゃうんで、あれ?1ってなんだったの?ってなりませんか。まあ、スルーすればそれなり楽しめるんでアリなんですけど、設定として勿体ないなーって。
コレね、ジョナサン・ノーランが入ってくれてたら違ったと思う。
ジョナサンがいるとどんな難解なストーリーでもきっちりわかるように作ってくれる安心感があるんですよね。
お兄ちゃんだけだと時々ひとりよがりな感ある。
でもまあ、大丈夫。
時間軸トリックはわからなくても十分、息苦しいから…すっげ、涙目でツラァってなる映画だから。
臨場感が半端ないんですよ。
主役やった子も物凄い辛かったらしいですよ。
だって海岸でズブヌレにされて、”当時を再現した”ウールの衣装が水吸って乾かないことこの上なくてちょっと半泣きなのガチだから。
コクピットの閉塞感も凄かったッスね。
あれ、コクピットから見える空、マジで遺跡ならぬ第二次世界大戦のヒコーキ持ってきて飛ばして撮ったらしいですから、どこまでノーラン先生はガチ勝負したいんだって話ですよ。
ちょっとその辺、ザック先生と語って欲しい。
駐車場があれば世界全部再現可能だってゆってた山崎先生でもいい。
個人的にはどっちでもいいと思ってる。
でもノーラン先生のあの世界がCGじゃないってのは、面白いよね。
インセプションのホテルの廊下、あれのメイキング見ると爆笑する。
これ、本気で作っちゃうんだ!って。
あ、全然関係ない話で申し訳ないんですけど、同じようなことをガチでやらかしたって話で、ジーザス・ジョーンズってバンドが前世紀にPV作ったときね、やっぱこう、宇宙空間っぽいのをイメージしたのかな、監督が作った円筒状の中に入れられて、その円筒をぐるぐる回されたんですって。
ボーカルはまあ、自由に動いて歌っていいから、円筒が回るごとに自分で歩いて、丁度いい場所で歌うんですけど、気の毒なのはメンバーですよ。
ハーネスっていうか、まあ命綱かな、で固定されちゃって、楽器と一緒に。それでぐるぐるやられるもんだから、途中から顔真っ青なの。吐くって顔だよね。あれでPV撮られちゃって。
しかも回している途中に安普請のセットなもんだから内壁が崩れてパラパラ落ち始めたんですって。
PVに映ってる白い粉、アレ、特殊効果じゃなくて、落ちてきた壁だからってボーカルがぼやいてたんで、是非見てあげてください。酷い話だ。
この映画、今やることには凄く意義があると思う。
最近、世界のどこでも、このうえなくきなくさいでしょ。
民間船を操作する父親が言うひとことに耳を傾けて欲しい。
「私たちが起こした戦争で、子供たちが死んでいる」
戦争も、原発も、ほかのありとあらゆる環境汚染も、全部、子供たちが背負わされる。
そのことを本気であなたがたは考えたことがあるのかと、
平気な顔で子供たちを戦争に行かせることができるように憲法を改正しようとしている連中に問い質したい。
戦争は絶対に、絶対に、二度としてはいけない。
子供たちが死ぬ。
それは人間の未来が死ぬということだ。
さて、この映画、IMAX推奨らしですが、私は敢えてIMAXではなくチネチッタのライブザウンドで観ましたぞ。
知る人ぞ知る、チネチッタの誇るライブザウンド、クラブチッタの音響チームが作り上げる映画ごとの音響設定。
ハンス・ジマーの音楽の鳴り響き方が尋常ではないので機会があれば是非、IMAX版とあわせて体験してもらいたい次第。
そろそろイギリスの話してもいい?
イケメンの話すると怒る?
なんかさ、イケメンそろいだから女子も楽しめるとかいう宣伝うって、女子怒らせてるけどさ、もう、その辺はほっとこうやって思ってる。
男性諸君は、こういう映画を女子が理解できると思ってないわけ。
思ってないっていうか、理解できないって信じたいわけ。
それが彼らの心の安泰を生むならいいんじゃないですか、もう放っておきたい。
たとえイケメンが出て無くても第二次世界大戦時というテーマに興味があるし、だいたいノーラン映画を見逃すなんて冗談じゃねえやって思う女子がいるってことをね、
わざわざ日本の男性諸君に伝えてあげる必要はないんですよ。
何の得にもならんし、面倒くせえし、話にならねえ。
それより、ノーラン先生が全力でかきあつめたイギリス男子の話でもしようぜ。
だいたいノーラン先生がイケメンそろえるのはノーラン先生の趣味だからな。
もともとガイ・ピアースの美しい身体に刺青きざみまくって、舐めるように映したノーラン先生だぞめめんと!
一部のマニアにしか知られていなかったクリスチャン・ベールの身体を黒いピチピチ衣装で包んで生身で飛ばしたノーラン先生。
マイケル・ケイン様を至高の執事として降臨せしめたノーラン先生。
イケメン出るに決まってるじゃん。そんなの自明じゃん。舐めるな。
今回の布陣は新人中心かと思いきや、脇をノーランファミリーでがっちり固めてきましたね。
あ、ケイン様もお声だけ聴けるよ!
まずはキリアン・マーフィー。
バットマンビギンズのスケアクロウでこの上ないヌルヌル感のある気持ち悪さでトップに躍り出たお方ですが、もともと、オーディションはバットマンで受けていたらしい…ごめん、バットマンではない。でも好きだ!
そんな気持ちでスケアクロウをオファーしたあと、ほぼほぼ毎回登場するノーランファミリーの代表みたいな感じですが、ケン・ローチの映画なんかにも出てて、手堅いキャリアを積んでるよ。
トム・ハーディもノーランファミリー。
今回はパイロット役なので顔のほとんどが隠れてるけど、優しい目と少しハスキーの掛かる低音ヴォイスですぐに誰だかわかります。
これがまたカッコイイんだ。
戦功を取ろうってんじゃないの。
ただ味方を守ろうとするだけのパイロットってめちゃくちゃカッコ良くないですか。
それでいて決して悲劇的でないというか、破滅型じゃないので自分の生き残る道もきちんと残す。そこがいい。
生きていればこそ、きっといつか親友と会える。
そういう可能性を残すのが逆にぐっとくる。
新顔としては相方パイロットを演じたジャック・ロウデン。
スコティッシュということで、ノーラン先生には珍しい…かな?(アイリッシュが多いイメージ)
この子がワンコ顔でとても可愛かった。ありがとうノーラン先生!!知らないスコティッシュを我らにありがとう!!
あ、そうだ。ジェイムズ・ダーシー出てましたね。
「クラウド・アトラス」の彼ですよ。なんかすっごい渋い感じになってて、これまた宜しいですなー。
主役のフィン・ホワイトヘッドは本当に新人中の新人。映画デビューがノーラン監督作とは…今後、頑張っておくれ~。
写真よりも線の細い、神経質そうな顔立ちと、意思の強そうな眼が印象的。
主役と運命を共にするアナイリン・バーナードは、ロバート・ダウニー・Jrの若い頃を彷彿とさせる母性本能くすぐり系ハンサム。
船に乗っていたトム・グリン=カーニーはこれまた映画デビューとのことで、久々のクラシカルハンサム。
エゲレスで舞台に立っている子なので今後の活躍に期待!しかし若い。なんかものすごく若い。
出演が話題になっていたワンダイレクションのハリー・スタイルズは…正直、あまり眼を惹かなかった(ので、上手いのかもしれない)。
さて、結局いちばん気になる俳優さんジャック・ロウデンを調べてみますかね…。
え、若き日のモリッシーやるんだ。
っていうかモリッシーってもう伝記映画やっちゃうの?
本人ぴんぴんしてるけど、そういうもんだっけ?
まあ、いいか。モリッシーに全然似てなくて超かわいいけど…日本公開求ム!