イムデベ!

個人的偏見と傾向による映画・音楽・本紹介&レポ

スター・ウォーズ 最後のジェダイ

正直、まったく観る気がなかったんですよ。

だって、前作、つまりJJエイブラムス監督作があまりにカスだったじゃないですか。

史上稀にみる最悪の焼き直し。

いやー、あんだけ酷い映画観たの久々だったなーっていうか、

JJ、ハン=ソロを意味なく殺したオマエだけは絶対許さない。

それでまあこの新三部作(なんでどれもこれも3コで1セットなのか)は無かったことにしようと思っていたのに、

 

のに!

 

ライアン・ジョンソン監督が2作目手がけるっていうじゃないですか。

しかも私たちの大事なプリンセス、キャリー・フィッシャーの遺作じゃないですか。

 

観に行きましたよ。

チネチッタのライブザウンド(最高!)であの冒頭のタッタター!で鼓膜震わせてきましたよ。

 

もうね、ひとことで言えば、

ライアン・ジョンソン、神!

 

いいか、JJ、リスペクトってのはこういうのを言うんだよ。

おまいがやったのはただの旧作の改悪だからな。

 

ライアンはちゃんと旧作を踏まえたうえで、オリジナルキャラが新たに直面する苦悩や

新キャラの成長をきっちり丁寧に、何より素晴らしいことに、真摯に描いてくれた。

生にも死にも意味のある物語を。

ほんの数分、数秒しか出ないキャラクターにも感情を。

 

LOOPERもそうだったし、ブラザーズ・ブルームもそうだった。

ライアン監督はどんなに複雑な物語でも破綻させないストーリーメーカーで

かつ、行間にキャラクターのバックグラウンドをぎゅうぎゅう詰めこんでくる。

キャラ立ちってのはこういうことだよね。

前作ではさっぱり意味不明だった新キャラたちが生き生きしちゃって、

ポーなんか特に別人じゃん!

 

冒頭のポーの活躍シーンのかっこよさ、その裏に起きる悲劇、哀しみと怒りと愛情が

本当に最初の数分のシーンに詰め込むだけ詰め込まれてて、

私さ、全然、泣くと思わないで観に行ったからティッシュとか用意してなかったんだよね。

泣いたわー。

もう冒頭だけで号泣した。

 

ルークの犯したあやまちもね、泣いたね。

ルークがダークサイドに落ちた弟子に自らの命を断たせるのは、

オビ=ワンがそうしたのと同じやりかたじゃないですか。

ローブを残して、ふっと消える。これがすごく上手かったね。

トリビュートってのは(以下略)

 

オビ=ワンがルークの目の前でかつて、弟子をダークフォースから救えなかった

自分の責任を取ったのと同じように、

身体を捨てて自然界のフォースの一部になったんだよね。

 

そうそう、今回は、フォースとは何ぞや、なぜジェダイは滅びるのか、というテーマが実に明確だった。

 

正直、最初の3部作では、かなり曖昧だったし、次の3部作では、矛盾てんこもりだった。

それが、今回、主人公にフォースとは何かを教えるシーンで、明確な定義付けを提示し、かつ、次に繋がる重要なコンセプトを明らかにしてくれた。

すなわち、フォースとは、自然万物の摂理であり、ジェダイはそれを理解している者たちの団体の名称であったということ。

ep1~3で描かれていた世界では、ジェダイは政治の世界で大きな力を持ってしまったがゆえに、徐々にフォースと乖離していっちゃった。

会議ばっかやると会社でも碌なことにならんでしょ。あれと一緒。

血筋を重んじ、子供のときからの教育を重んじ、更にさまざまな制約をジェダイとして課し、さらにはナイトやマスターの称号など、自然とは相容れない実に人間的な仕組みを取り入れてしまった。

その結果、ジェダイとフォースのあいだに生じた歪みが、アナキンをダークサイドに陥れたわけだよね。

だって、自分は力が強いのに、なかなか称号を与えられないうえに、恋もダメって言われちゃったら、若者だもの、そりゃ鬱憤たまるわ。

もしもジェダイが政治的な団体ではなく、あくまでフォースを理解し、使いこなすことのできる団体のままでいたならば、無闇に戦争に駆り出されることもなく、アナキンは敵を倒す力とフォースは別モノだって理解できたと思うんですよね。

あの状況で、オマエは強いけどジェダイとしてはイマイチって言われても、納得はしかねるよ。

そんなこんなで自滅といってもいい流れで崩壊したジェダイが、血筋に頼って新たに生み出した最後のジェダイ・マスターがルーク・スカイウォーカーなわけですよ。

ところが、ルークも、血筋に頼ってジェダイを引き継ごうとしちゃった。

レイアとハンの息子には、当然、ジェダイとフォースの間の歪も受け継がれる。いくら血筋がいいからと言って、子供がいきなり親元から引き離されれば、親に捨てられたと思って当然だもんね。ダークサイドに取り込まれ易くもなる。

 

この弟子の転落はルークのあやまちに違いなく、そのあやまちを清算するため、ルークが命をフォースに返すのは、彼の師匠であるオビ=ワンが、アナキンに対してそうしたのとまったく同じやり方で、きっちり道理に適っている。

ライアン・ジョンソンという監督はあらゆる意味で道理とか信念を大事にしている気がするんですよ。

主役のレイなんか、前作に比べてますます侍らしくなってるもんね。

前作ではポッと出てきていきなりライトセーバーをふるったことで、何コレ感がぬぐえなかったけど、今作では、レイが人生において、フォースを理解しえる経験と知恵を持っており、更に彼女の一貫した物事の考え方(信じたものを貫く力)がフォースを使うにふさわしいことを明らかにしている。

彼女はレジスタンスの信じるところを信じると決めているから、どんな誘惑にも揺らがない。

彼女はハンソロを信じ、レイアを信じ、ルークを信じ、ただ希望だけを追い求める。そこにカイロ・レンが持つような弱さは微塵も無い。

たとえ自分の親が名のない人間に過ぎず、生まれがどこでもない場所に過ぎないとしても、そんなことは彼女の信念に何も関わらない。

次へと繋がるコンセプトがここにあるよね。

すなわち、血筋に寄らず、生まれに寄らず、それでも人は信念さえ持てばジェダイになれるのだということ。

それをルークも確信したからこそ、最後にカイロ・レンに自分が最後のジェダイではないと言い残す。

 この辺は拍手ものの展開だと思うんですよ。新しい世代に入るときに、昔のものを破壊するってのが簡単なやり方なんだろうけど(JJにはそれしかできない)、敢えて踏襲しつつ、次の進化を納得のいく形で見せてくれる。

 

レイのジェダイとしての成長や、それと同時系列で語られるポーがリーダーとして育っていく過程に、本当に大事なことは何かが絡められているのもいいよね。

メカニックの女の子が、”口もきけない存在”であったヒーローのフィンとタッグを組んで、奮闘するのは見ていて爽快だし、ここでも、レイと同じように、血筋によらず、生まれによらず人は何者にもなれるのだいうテーマが重複して提示されているんだよね。

 

この人の映画は行間を読めば読むほど美味いスルメ映画なので、一回見ただけだと勿体ないと思うんだけど(まだ二回しか観てない)、まず一番にいえることは、今、世界中で話し合われているというか、未来に向けて絶対に実現しなくてはいけないダイバーシティをいやみなく展開した手腕が本当に見事だよねってこと。

 

あ!一点、冒険したな、って思ったのはルークが「寺院」に「12人の弟子とカイロ・レンを連れて行った」ってところ。

前者は仏教とかヒンドゥーとかいろいろ当て嵌まるでしょ。

後者は明らかにキリストの最後の晩餐だよね。カイロがユダなわけ。

そういう宗教の違いっていうのが、スターウォーズの世界には無くて、無いというか、垣根が取っ払われていて、すべてがフォースという力に集約されているんだなって思った。

これも道理に適っていると思う。

宗教っていうのはどういうふうに語られているかの違いしかないと思うんですよ。

で、書かれてる書物ってのは、やっぱり書き写しが何度もなされていて、その時々の権力者の意向に沿ったアレンジが加わってるんだろうと(これは私の英会話教師だったノーザンアイリッシュのアイディア)。

この映画では、”古くさい”ジェダイの教本を焼くことで、逆に、所謂バイブルだとか聖典だとかに縛られない世界が始まるんだなってのを提示しているんだと思う。

 

さて、とりわけSWファンとして嬉しかったことを2つ挙げると、

1.ミレニアム・ファルコン号の使い方がわかっている!

あの船はぺったんこだから、それをいかして狭いところを凄い勢いでぶっ飛ばすのがいいんだよね~。

そういう見せ場をちゃんと作ってくれた。

あと、チューイがパイロットだった。それも嬉しい。

旧作ファンにとってあの船は特別だから、ハン=ソロかチューイかランドーしか飛ばせないと思っていたいの(JJがぶち壊すだろうなと思ってる)

 

2.R2D2がいちばん最初のレイアのホログラムをルークに見せてくれた!

あれは本当に最初の最初。

ルークの冒険の始まりでもあり、私たちファンにとってSWの世界の始まりだった。

子供のとき、初めて観た1作目のスターウォーズで、白い服で黒い髪のかわいい

お姫様が、助けを求めてくるホログラムを観て、

それこそルークと同じくらい夢中になって、

それが実際会ってみたら、つっけんどんで、高飛車なお姫さまで、

可愛くて、おろおろするルークが楽しかったなあ。

 今作、キャリー・フィッシャーがほんとうにほんとうにきれいで、

私たちの大事な大事なプリンセスなんだって思いながら観てたから

最後のクレジットロールでメッセージが出たときは涙が止まらなかった。

私にとってお姫さまといったらレイア姫キャリー・フィッシャー。RIP。

最後になってしまったけれど、美しくて優しくて強いお姫さまをありがとう。

 

願わくば3作目もライアンに撮ってもらいたかったけど、またJJだそうですね。

あいつがまともな映画を撮れるとは全然思ってないのでたぶん、観ない。

 

今回のは素晴らしかったので、リピるよ!

ローグ・ワンも良かったけど、これもいいねえ。

 

さて、最後になったけど、マーク・ハミルのインタビューでハン=ソロの死についての彼の考えが私の理想と一致しているので、リンク張っておきます。

楽しいインタビューをありがとう、マスター!

 

wired.jp