イムデベ!

個人的偏見と傾向による映画・音楽・本紹介&レポ

兄弟モエ属性の人に薦める神映画2本!

兄弟モエと言えば、色んな映画があるわけですよ。

ロード・オブ・ザ・リング」のボロミア、ファラミア兄弟とかね。あれはなんだろうね、かわいくてけしからんよね。

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「処刑人」のコナーとマーフィーに関しては、あれはエロくてけしからんかった。

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「スーパーナチュラル」のディーンとサムは……あれはもうなんていうかなー、兄弟っていうかなー、もうなー、正直いちゃつきすぎて意味がわから(以下略)

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とまれ、私的に、これ観てるひと絶対少ないけど兄弟モエの人に絶対見て欲しい!!映画を紹介するというよりは押し付けたい。

なんならDVD持って押しかけたい。

そんな2本を紹介したいと思います。

 

1.「DUST」2001 UK | Germany | Italy | Republic of Macedonia, directed by Milcho Manchevski

 

「ビフォア・ザ・レイン」でマケドニアの英雄となったマンチェフスキー監督の第二作目にして問題作、「ダスト」

主演はデヴィッド・ウェンハム(ここでもファラミア!)とジョセフ・ファインズ

デヴィッドが兄ルークを、ジョセフが弟イライジャを演じています。

物語は黒人男性が老婆の家に強盗に入ったところから始まり、思いのほか乱暴モノの老婆が黒人男性になかば強引に話して聞かせる物語がルークとイライジャの物語。

かつて乱暴者の兄ルークと、心優しい弟のイライジャは二人で暮らしていたが、イライジャはフランスから流れてきた娼婦と恋に落ち、結婚する。その一方でルークは彼女に手を出していて、彼女が弟ではなく彼に本気になると彼女を捨てて旅に出る。そのことを知った弟は、兄を猛追撃。

心優しい弟が拳銃片手に「絶対ぶっ殺す」と兄貴を追いかける物語と化す。

凄いっしょ。

もうこの弟の兄への執着が異常。

どんどんズタボロになっていく兄貴の美しさも異常。

物語は多重化していき、「語られてこその物語」という結論に帰着するんだけど、たぶんこの結論には、そうとう深い背景があって、

それこそ「ビフォア・ザ・レイン」でマンチェフスキーが描いた語られない歴史とは、とか、

マケドニアあたりの歴史的背景や政治情勢とか、宗教観とか、

色々織り込まれている一回観ただけじゃ足りない系の傑作なんですけど。

なんですけど!

でも兄弟モエが凄すぎてなんだかもうわかんない!

弟が世界の果てまで兄貴をぶっ殺しに行くとか、どんだけなの。

このわけのわからない兄弟愛を作り出してしまったマンチェフスキー先生いわく、

「僕、兄弟いないからよくわからないんだよね」

そんな監督の指揮のもと、6人兄弟の末っ子デヴィッドと、8人兄弟の末っ子ジョセフが繰り広げるとんでもない愛憎劇。

個人的にはデヴィッドの肺から出る咳を全力で推したい。不毛な土地で埃と砂にまみれて血を吐くシーンは実にエロく美しい。

散々ふざけたこと書いてしまいましたが、本当言うとちゃんとした傑作映画なので、真面目に語ろうとすればいくらでも真面目に語られる深さがあります。

でも!それを越えたジョセフの熱い愛憎が!!

僕らの心をじったんばったんさせるわけですよ!

↓荒くれ者の兄貴ルーク役のデヴィッド、めちゃくちゃカッコイイ

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↓怪我属性の方にも全力プッシュできる

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↓普段は実の兄貴(レイフ)に甘えん坊さんなジョセフが独占欲剥き出しで追いかけてくるぞ!

「dust finnes」の画像検索結果

ところでこの映画、「ダスト」が気に入ったら是非「ビフォア・ザ・レイン」もご覧ください。

マンチェフスキー監督の映像美、シーンの切り替わりの絶妙さ、そしてミュージックビデオ監督出身ならではの音楽のセンスの良さに加え、これまた深い話なんだ…。

今回は兄弟モエを前面に押し出してプッシュしてますが、「ダスト」のストーリーはそうとう深いです。観終わってから何度も何度も、この物語の意義に考えさせられた映画でもあります。

 

2.「ブラザーズ・ブルーム」"The Brothers Bloom" 2008 USA, directed by Rian Johnson

 

これ、私、勝手に兄弟の結婚式に行く話だと思って観たんですけど、全然そんな話じゃなかった(笑)

ブルーム兄弟というタイトルですね。まんまやん。

兄を演じたのは優しさあふれるマーク・ラファロ、弟を演じたのはアンニュイハンサム、エイドリアン・ブロディ

この兄弟、みなしごで、子供の頃から詐欺で生計を立ててきた。

そんな詐欺生活が嫌で、時折、ひとりでどこかに行っちゃう弟を、これが最後、今回が最後と兄貴が連れもどしに行く。

今回のターゲットは豪奢な邸宅に一人で住むお嬢様。これをナンパして大金ふんだくろうと企む兄、一方でうっかりホントにお嬢様と恋に落ちちゃう弟。

この話、兎に角、兄貴が弟に甘い!

どう考えてもこの兄弟が生きてこれたのは兄貴の詐欺のおかげなんだけれども、弟がそれをなんとも思ってないあたり泣ける。そしてモエる。

ネタバレしたくないのでこれ以上語れないんですが、兎に角兄貴の献身っぷりが眩しすぎて、せつな過ぎて、なんともいえない気持ちになる映画なので、スーパーナチュラルファンはぜったい好きだと思う(特定か)

色々に解釈できる物語で、コメディタッチなんだけど、よくよく考えてみると

 

モエる。

 

壮絶にモエる。

 

多分、ダスト以上に見た人が少ない映画だと思うので全力プッシュしておきます。

↓似てない弟に甘々の兄貴が可愛い

「adrien brody brothers bloom」の画像検索結果

↓実は菊地凛子がすごくいい役で出てる。

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ちなみにライアン・ジョンソン監督はその後「ルーパー」を撮り、新しいスター・ウォーズ「ラスト・ジェダイ」の監督・脚本も務めているようです。

 

とまれ、兄弟モエ属性の人には、どちらの映画も絶対ツボだと思うし、映画としてもどちらも非常に良いですよ!

怪我属性の人は「ダスト」観てください(ぼそり)

 

アトミックブロンド Atomic Blonde directed by David Leitch, 2017

全然前情報なしに観に行ったんですが(シャリーズ・セロンのアクション映画というだけ)存分に楽しんできました。

以下、ネタバレを含むので、何も知らずに楽しみたい方は回れ右をして映画館へどうぞ。

できるだけ音響の良い映画館で観ることをオススメします。

現状、音響トップのチネチッタさんで公開していないことがかえすがえすも残念…。

「Atomic Blonde」の画像検索結果

 

【ネタバレ有】

まず舞台設定がいい。

東西ドイツの壁崩壊前夜のドイツでの各国スパイ合戦。

シャリーズ・セロン演じるイギリスのスパイ、ロレーンは、かつて恋人であった(多分)同僚のスパイがベルリンで殺され、欧米スパイのリストをロシアスパイに奪われたことを知る。

リストを奪い返すべく、長くベルリンに潜伏しているイギリスのスパイと協力せよとの命令を受けるが、そのスパイは敵か味方か判らない男だった。

というのが大体の粗筋で、あとはアクションに次ぐアクション。

冒頭は当時の音楽が兎に角がんがん鳴るのがうるさく感じるし、

あまりにセロンがスタイリッシュで、これセロンのPV?って思っちゃうんだけど、

物語が転がり始めると、アクションが凄すぎて、音楽の大きさなんか気にならなくなるし、セロンのルックスとアクションに当時の音楽が実にぴったり嵌る!

あの長いおみ足を黒いロングブーツに包み、超ミニスカートで、次から次へと出てくる野朗どもを蹴り飛ばし、投げ飛ばし、殴り飛ばしすのが実に爽快!

ストレス溜まったときに観たいタイプの映画だね(笑)

ストーリーはサスペンス有り、ドキドキハラハラ展開有りで、中だるみ一切なしのジェットコースター系。

ファッションは素晴らしい。セロンと、あとフランス人のスパイ女性(キングスマンでガゼルちゃんをやった子)が出てくるんだけど、二人とも本当に美しい衣装と下着に身を包み、目の保養~。

一方で野朗どもは徹頭徹尾、野朗ども。

 まあ、ぶっちゃけ、汚い。

マカヴォイさん(なんでマカヴォイさんには”さん”をつけなければいけないのか知らないが、つけないと怒る勢力が存在している。ハク様の”様”と同じ類の何かだ)がここまできちゃないってのも珍しいので、なかなか面白いのではないかと。

あとマッチョです。マカヴォイさん、マッチョです。

常々、マカヴォイさんはオファーされるよりもダーティな役の方が似合っていると思っていたので、今回の役柄はドンピシャじゃないでしょうかね。

得たいの知れない、きちゃない、マッチョ。

マカヴォイさんの底知れない視線がばっちり役に嵌っていました。

とかなんとかいいつつ、脳裏に浮かぶのはセロンのガーターベルトばっかりなのはお許し願いたい。本当に美しかったのだ。

アクションがけっこうグロイので、そういうの苦手な人はご注意を。

ところで、作中、セロンが逃げ込む映画館で掛かっているのは、タルコフスキー監督の「ストーカー」。

これ、1年くらい前に(曖昧)タルコフスキー特集なるものが新宿で上映されてまして、かねてより観たかった「ノスタルジア」を観に行ったら、開演1時間以上前だというのに、もう売り切れ。それで今ならかろうじてチケットがありますよと言われて観た映画でした。

「ストーカー」もそのあとすぐ完売しちゃったので、実際、映画上映時間になって映画館にチケット片手に戻ったら、映画館の前で涙ぬぐってる女性とかいてね、タルコフスキーの深さを思い知ったんだけど(映画じゃないのか)。

「ストーカー」って言うのは案内人くらいの意味だと思ってください。捜し求める人とかそういう意味もあったかも知れない。とにかく、所謂「ストーカー」とは全く違います。

この映画、どう観ても、チェルノブイリ事故後の事故現場近くが舞台設定なんですよ。

ってチェルノブイリ事故が起きる10年も前に作られた映画なんですけど(ぞっとする話なわけ)。

森の奥深くに人の望みをかなえる扉(或いは部屋)があって、そこに行くにはストーカーを雇わなければとうていたどりつかない。

常に死の危険を感じながら、ストーカーと共に目当ての扉までたどり着いた男二人が扉に求めるものとは、って言うところの、扉にたどりつくちょっと前のところが、セロンの背後に上映されていたように見えた。

最終的にセロンがそのスクリーンを破く=扉を開けるに掛けているのかな。

まあ、このあたりは知っている人だけ気付いてみたいなメッセージだと思っておく。

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↑こんな感じの画面だったと思うんだ。よく見えなかったけど。

というわけで、ご興味がありましたら是非、この「ストーカー」も併せて観るとより楽しい、かも知れない(観なくても十分楽しいし、「ストーカー」自体は全く楽しい映画ではない。美しいけど)。

最後に特筆したいのは音楽。兎に角音楽が良かった。

デペッシュ・モード、ボウイ、キュア、エコバニ…しかも、有名曲だけじゃなくて、けっこうコアな曲も選んでるし、現代的にアレンジされたカヴァーも織り交ぜてバランスをよくしているあたり、凝っている。

クレジットがボウイ&クイーンの「Under Pressure」ってのも粋だよね。

この曲はたまたま、同じスタジオにボウイとクイーンがいて、じゃあ曲でも一緒に作ってみようかと言って作った曲(とクイーンが言っていた)なので、PVにはボウイもクイーンも出演していないんだけれども、凄い名曲だと思う。歌詞もいい。

で、残念ながらOSTを観たら、全曲収録されているわけじゃなくて、だいぶ、欠けてる。全リストはどうやら下記の模様。自分で集めるしかない(笑)

Atomic Blonde (2017) Music Soundtrack - Complete Song List | Tunefind

まあ、権利関係がだいぶん大変だったようです。

あと映画ではカヴァーが使われているのについても上記リストはオリジナルの方。

ところで、映画、生々しいアクションが素晴らしいなと思っていたら監督さん(David Leitch)、スタントマンなんですね。

監督業はほぼコレが初(長編)。次回作はデッドプール2だそうです。

うーん、どうなんだろう。この人、音楽と女性の足フェチだと思うんだけども、デッドプールか……

今回も全然関係ないタルコフスキーの話とかして長くなったのでこの辺で。

タルコフスキーは日本人気ほんと高くて、「スキスキタルコフスキー」なんていう舐めてるとしか思えない本も昔出てたくらいなんだけど、こうして映画の中に登場するところを見ると向こうでも人気(そらそーだ)

今度こそ「ノスタルジー」を観たい。

V6 "The Ones Tour" コンレポ Sep-Oct. 2017

昨日書いたコンレポがさくっと消えたので、ブログって本当に…!!
と思いながらざっくり書き直す。

参戦は4回。おともだち4人いたおかげ!じゃなかった3人だよ。私入れて4人。

9月17日宮城セキスイハイムスーパーアリーナ
10月6~8日横浜アリーナ

の計4回!

2年ぶりのコンで、20周年のとき、動員数が多すぎて、ステージを極限まで削って観客入れましたって言ってたんですけど、今回はさらに5万人増!

というわけでステージセットはさらに極限まで(以下略)

よく踊れるな!(センステ狭ッ)

そんなステージをところ狭しと、あ、本当に狭いんだけど。
いや、それはいいんだ、兎に角駆け巡り、踊りまくり、歌いまくり、さらにはトロッコ”出ましたジャニーズ!”を駆使して後方ファンまで痒いところに手が届くファンサっぷり…

痒いところって私たちですけど~。
目の前、トロッコ通りましたけど!
すっげえな、ほんのすぐ傍で見るV6!

イケメン超えてた。
顔小さいし(近くても遠近法狂ってるんじゃねえかって小ささだよ)
おめめ大きいし(岡田くんの顔はだいたいおめめで、後は鼻です)
スタイルいいし(イノッチの身体はエロいです)
顎裏の美しさ、腰まわりの衣装の皺の美しさ、どれを取ってもパーフェクトでした。
6人全員。

歌上手いんだ、これがまた…。
私ね、ずっと、洋楽派なんですよ。
今も洋楽派ですよ。
正直、自分で曲作ってないやつのライブなんか絶対行かねえって言ってましたよ。
そういう問題じゃないんだってV6に教わりました。
曲を作る作らないじゃない、真摯に歌うってコレなんだなって。
心に響くってコレなんだなって!

もう泣くもんね。歌だけで。
冷たい雨に降られた日も、って歌詞でウワーッて涙こみあげたのは、宮城が台風でグッシャベッチャに濡れたからでも、横浜初日が豪雨で宮城よりも濡れたからでもないんですよ。
いや、確かに濡れましたけど。
そうじゃなくて、本当にこの人たち寄り添ってくれる!つらいときにこの人たちの歌声が助けてくれる!って思えるんですよ。

どうせジャニなんて口パクだろと思っている人はぜひV6のライブを見て頂きたい(WOWOWでやるから)。
ナマ歌っすよ。
メンバーが吹きださなきゃ、ファンのあたしだって口パクだろって思うっくらい上手いときもある(怖)
あれだけ踊ってあれだけ歌う。

そう。
キレッキレに踊るんだ、これがまた。
今回はほぼほぼアルバム曲中心だったんで、当然バラードなんかも入ってるんですけど、踊る。
キレッキレに踊る。
このキレッキレに踊るってのは、すなわち、メンバーの周囲に多分真空状態発生してて、カマイタチ出るって意味でのキレッキレだから!

ダンスと歌でファンを囲い込む、まさにカッコイイとありがとうの連続技。

今回個人的に出色だったのはBeat of Life。
生ジガジガを聴ける日が来るとは!しかもアレ、メンバー全員ジガジガってるのね!
あと、ボク、君、なんとか(忘れたのか)はライブで聴くと泣けますなあ。なんかもうみんなの幸せを祈っちゃう曲だよね。
NeverとCan't get enough、Round and Roundは間違いのない名曲。大好き。
刹那的ナイトは見せ方のバリエーションがスゴい。まさかの檻プレイ。
見せ方と言えば、ステージ狭くても、セットが少なくても、見せ方は無限に広がる的な感じでしたね。
もう何が映像で何が映像じゃないのかわからないってとこまで行ってます。V6進化してる。
あと、そうだ、マニアックはCDだと全然よさがわからなかったんだけど、ライブで聴くと最高。
それからGet NakedのカミセンダンスはR18.
アレをWOWOWさんが果たして流してくれるのか期待しかない。
自撮りをステージいっぱいに広げたスクリーンに映しながらのダンスってのはいいですなあ。
カミセンそれぞれの自撮り、個性が出ていて大変良かった(かわいかった)。
あとCloudy Sky。やっぱ曲最高。歌詞がかえすがえすも惜しいけど(なんなんだあのやっつけ仕事は…秋元ー!!!)、曲はほんっと最高。ダブルアンコをこの曲で締めてくれたのは嬉しかった。ライブ後もあの曲が耳に残って、まだ旅の途中にいる気分になれるから。

一方、メンバーの様子はいつもどおりおかしい。
笑えるっていうより、挙動不審って意味でおかしい。
特に岡田くんと坂本くんは正反対に挙動がおかしすぎて見飽きない。
岡田くんのグッチ雄三のモノマネ、アレはきっとゲリナフで手に入れたファルセットボイスで遊んでたら生まれてきたブツだと思うんですけど、全然似てないので、是非、木村大作さんに披露したってください。
坂本くんはスクリーンでメンバーがMCやってるの見て笑ってないで、直にメンバー見るか、ファン見てください。
あと、剛くんと健くんは岡田くんの挙動をファンが甘やかしたせいだって言ってましたけど、違います。あなたたちが甘やかしたおかげであんなに可愛く育ってありがとうございます。
私は岡田担ですが、グッチ雄三のモノマネを4時間観てられるなんてことは冗談でも言えません。剛くん…甘やかしすぎ!可愛い。
そういえば、岡田くんの産毛を一生懸命撫で付けてあげたり、剛君の前髪がはらりと落ちているのに対して「だからあのワックスはゆるいって言ったでしょ!」ってプンスコしている健くんは、いつでも付き合いたての彼女みたいだなあと思いました。可愛い。

健くんの優しいキッスと甘い言葉でシメるまで、3時間はないな、2時間半ちょいかな。
2年越しのライブ、堪能しました。
明日からまた頑張ろうって思いました。

ところで、今日、オーラス。台風の中、静岡で行われたコンレポ読んでたら、読んでるだけで泣けてきました。

V6って、凄いね。
ホントにV6のファンになって良かったなあと幸せ噛み締めながら、うちわとペンラをちゃんとしまいました。
また来年!
お願い、来年!!(懇願)

ダンケルク "Dunkirk" 2017 UK, etc. directed by Christopher Nolan

第二次世界大戦時、ドイツ軍によってフランスの海岸線「ダンケルク」に追い詰められた総勢40万のイギリス・フランス両群をイギリス軍と民間ピーポーが救出に向かった実話をもとにしたノーラン先生の大作映画。

ざっくりまとめりゃ究極の閉塞感ムービー。

海に追い詰められるということは果てしなく広い海岸線で船を待つぎゅうぎゅうの列に並び、これまた人でぎゅうぎゅうのはしけを無理やりわたり、そして船底でぎゅうぎゅう詰めになり、挙句の果てには魚雷にやられて、0スタート。

一方の救出に向かう民間船の小さいことこの上ない。だだっぴろい海のうえで、頼りないというより、こりゃあかんだろって大きさの船の上をがんがん戦闘機が飛んでいく。撃たれたらいっぱつアウトの空間に閉じ込められているのは父子と息子の友人、そして途中で拾ったイギリス兵だ。

大空を飛ぶ飛行機では物凄く小さなコクピットに閉じ込められたパイロットたちが一瞬一瞬に命を掛けている。

この設定だけで息苦しくなるような閉塞感じゃないですか。

海岸は広く、海も広く、空も広いのに、三者三様に閉じ込められているわけですよ。この設定が(実話だけど切り取り方が)ノーランらしい秀逸さ。

加えて、お得意の時間軸トリックも発揮して、海岸でのタイムラインは1週間、民間船のタイムラインは1日、飛行機でのタイムラインは1時間となっている。

すなわち、それぞれの場所に点在する主人公たちの時間軸はずれているので、今、このとき、彼らがどの状態にあるのかというのは後半、彼らの時間軸が交差するときまで観客に知らされない。

さすがノーラン先生、クレバーだぜ…

とは思うんですけど!

ただね、ちょっとね、不親切が過ぎるっていうか、もうちょっと字を大きくしようよ!

1.1 week

って画面に出るんですけど、ダンケルクの海をバックにね、見えにくいから。

灰色の海とか港バックに白文字、見えにくいから。

多分、あれに気付いてない人多いと思うんですよ。

そうすっと当然、2からになっちゃうんで、あれ?1ってなんだったの?ってなりませんか。まあ、スルーすればそれなり楽しめるんでアリなんですけど、設定として勿体ないなーって。

コレね、ジョナサン・ノーランが入ってくれてたら違ったと思う。

ジョナサンがいるとどんな難解なストーリーでもきっちりわかるように作ってくれる安心感があるんですよね。

お兄ちゃんだけだと時々ひとりよがりな感ある。

でもまあ、大丈夫。

時間軸トリックはわからなくても十分、息苦しいから…すっげ、涙目でツラァってなる映画だから。

臨場感が半端ないんですよ。

主役やった子も物凄い辛かったらしいですよ。

だって海岸でズブヌレにされて、”当時を再現した”ウールの衣装が水吸って乾かないことこの上なくてちょっと半泣きなのガチだから。

コクピットの閉塞感も凄かったッスね。

あれ、コクピットから見える空、マジで遺跡ならぬ第二次世界大戦のヒコーキ持ってきて飛ばして撮ったらしいですから、どこまでノーラン先生はガチ勝負したいんだって話ですよ。

ちょっとその辺、ザック先生と語って欲しい。

駐車場があれば世界全部再現可能だってゆってた山崎先生でもいい。

個人的にはどっちでもいいと思ってる。

でもノーラン先生のあの世界がCGじゃないってのは、面白いよね。

インセプションのホテルの廊下、あれのメイキング見ると爆笑する。

これ、本気で作っちゃうんだ!って。

あ、全然関係ない話で申し訳ないんですけど、同じようなことをガチでやらかしたって話で、ジーザス・ジョーンズってバンドが前世紀にPV作ったときね、やっぱこう、宇宙空間っぽいのをイメージしたのかな、監督が作った円筒状の中に入れられて、その円筒をぐるぐる回されたんですって。

ボーカルはまあ、自由に動いて歌っていいから、円筒が回るごとに自分で歩いて、丁度いい場所で歌うんですけど、気の毒なのはメンバーですよ。

ハーネスっていうか、まあ命綱かな、で固定されちゃって、楽器と一緒に。それでぐるぐるやられるもんだから、途中から顔真っ青なの。吐くって顔だよね。あれでPV撮られちゃって。

しかも回している途中に安普請のセットなもんだから内壁が崩れてパラパラ落ち始めたんですって。

PVに映ってる白い粉、アレ、特殊効果じゃなくて、落ちてきた壁だからってボーカルがぼやいてたんで、是非見てあげてください。酷い話だ。

 

この映画、今やることには凄く意義があると思う。

最近、世界のどこでも、このうえなくきなくさいでしょ。

民間船を操作する父親が言うひとことに耳を傾けて欲しい。

「私たちが起こした戦争で、子供たちが死んでいる」

戦争も、原発も、ほかのありとあらゆる環境汚染も、全部、子供たちが背負わされる。

そのことを本気であなたがたは考えたことがあるのかと、

平気な顔で子供たちを戦争に行かせることができるように憲法を改正しようとしている連中に問い質したい。

戦争は絶対に、絶対に、二度としてはいけない。

子供たちが死ぬ。

それは人間の未来が死ぬということだ。

さて、この映画、IMAX推奨らしですが、私は敢えてIMAXではなくチネチッタのライブザウンドで観ましたぞ。

知る人ぞ知る、チネチッタの誇るライブザウンド、クラブチッタの音響チームが作り上げる映画ごとの音響設定。

ハンス・ジマーの音楽の鳴り響き方が尋常ではないので機会があれば是非、IMAX版とあわせて体験してもらいたい次第。

そろそろイギリスの話してもいい?

イケメンの話すると怒る?

なんかさ、イケメンそろいだから女子も楽しめるとかいう宣伝うって、女子怒らせてるけどさ、もう、その辺はほっとこうやって思ってる。

男性諸君は、こういう映画を女子が理解できると思ってないわけ。

思ってないっていうか、理解できないって信じたいわけ。

それが彼らの心の安泰を生むならいいんじゃないですか、もう放っておきたい。

たとえイケメンが出て無くても第二次世界大戦時というテーマに興味があるし、だいたいノーラン映画を見逃すなんて冗談じゃねえやって思う女子がいるってことをね、

わざわざ日本の男性諸君に伝えてあげる必要はないんですよ。

何の得にもならんし、面倒くせえし、話にならねえ。

それより、ノーラン先生が全力でかきあつめたイギリス男子の話でもしようぜ。

だいたいノーラン先生がイケメンそろえるのはノーラン先生の趣味だからな。

もともとガイ・ピアースの美しい身体に刺青きざみまくって、舐めるように映したノーラン先生だぞめめんと!

一部のマニアにしか知られていなかったクリスチャン・ベールの身体を黒いピチピチ衣装で包んで生身で飛ばしたノーラン先生。

マイケル・ケイン様を至高の執事として降臨せしめたノーラン先生。

イケメン出るに決まってるじゃん。そんなの自明じゃん。舐めるな。

今回の布陣は新人中心かと思いきや、脇をノーランファミリーでがっちり固めてきましたね。

あ、ケイン様もお声だけ聴けるよ!

まずはキリアン・マーフィー。

バットマンビギンズのスケアクロウでこの上ないヌルヌル感のある気持ち悪さでトップに躍り出たお方ですが、もともと、オーディションはバットマンで受けていたらしい…ごめん、バットマンではない。でも好きだ!

そんな気持ちでスケアクロウをオファーしたあと、ほぼほぼ毎回登場するノーランファミリーの代表みたいな感じですが、ケン・ローチの映画なんかにも出てて、手堅いキャリアを積んでるよ。

トム・ハーディもノーランファミリー。

今回はパイロット役なので顔のほとんどが隠れてるけど、優しい目と少しハスキーの掛かる低音ヴォイスですぐに誰だかわかります。

これがまたカッコイイんだ。

戦功を取ろうってんじゃないの。

ただ味方を守ろうとするだけのパイロットってめちゃくちゃカッコ良くないですか。

それでいて決して悲劇的でないというか、破滅型じゃないので自分の生き残る道もきちんと残す。そこがいい。

生きていればこそ、きっといつか親友と会える。

そういう可能性を残すのが逆にぐっとくる。

新顔としては相方パイロットを演じたジャック・ロウデン。

スコティッシュということで、ノーラン先生には珍しい…かな?(アイリッシュが多いイメージ)

この子がワンコ顔でとても可愛かった。ありがとうノーラン先生!!知らないスコティッシュを我らにありがとう!!

あ、そうだ。ジェイムズ・ダーシー出てましたね。

クラウド・アトラス」の彼ですよ。なんかすっごい渋い感じになってて、これまた宜しいですなー。

主役のフィン・ホワイトヘッドは本当に新人中の新人。映画デビューがノーラン監督作とは…今後、頑張っておくれ~。

写真よりも線の細い、神経質そうな顔立ちと、意思の強そうな眼が印象的。

主役と運命を共にするアナイリン・バーナードは、ロバート・ダウニー・Jrの若い頃を彷彿とさせる母性本能くすぐり系ハンサム。

船に乗っていたトム・グリン=カーニーはこれまた映画デビューとのことで、久々のクラシカルハンサム。

エゲレスで舞台に立っている子なので今後の活躍に期待!しかし若い。なんかものすごく若い。

出演が話題になっていたワンダイレクションのハリー・スタイルズは…正直、あまり眼を惹かなかった(ので、上手いのかもしれない)。

さて、結局いちばん気になる俳優さんジャック・ロウデンを調べてみますかね…。

え、若き日のモリッシーやるんだ。

っていうかモリッシーってもう伝記映画やっちゃうの?

本人ぴんぴんしてるけど、そういうもんだっけ?

まあ、いいか。モリッシーに全然似てなくて超かわいいけど…日本公開求ム!

 

美女と野獣 "Beauty and the Beast" 2017 US/UK directed by Bill Condon

エマ・ワトソン主演、共演がルーク・エヴァンスユアン・マクレガー、そしてサー・イアンということで非常に楽しみにしていたんですが、非のうちどころのないファミリー映画だった、というかもっと端的に言えばディズニー映画だった。

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悪くないよ。

でも残念ながらそれほど良くもない。

最初から最後まで歌あり、涙あり、笑いありで楽しめること請け合いなんだけれども、もうちょっと、もうちょっとのところで、子供向け的な安っぽさを払拭できなかった感がある。

俳優人は概ねイギリス人なんだが、監督がアメリカ人。

だからなのかなあ。ポップコーンムービー以上にはならなかった。

設定がかなり違うのも気になった。姉がいないってこの話には大きい要素だと思う。ろくでもない姉や兄がいるからこそのベルちゃんなんですよ。

つまり一人っ子で、お父さんに「生きてくれ」と言って人質に取られるというのが、いまひとつしっくりこない感があるのね。

姉や兄がいるならば(それがどんなにろくでなしだろうと)自分がいなくてもお父さんは生きていけると思うかもしれない。

でも、この子一人っ子なんだよね。

あの状況で父の代わりに私が犠牲に、と身代わりを申し出るのは、優しさよりも利己的な頑固さを感じてしまった。

それから、彼女が野獣と恋に落ちる過程が唐突すぎてしっくり来ない。

野獣が本をくれたり(もともとベルちゃんが貧しい設定だから本がない!)、喋る家具や食器があなたさえウンと言ってくれれば私たちが人間に戻れると嘆きながら、優しくしてくれたり……これで好きになるっていってもストックホルムシンドローム的なものがありませんか。大丈夫ですか、ベルちゃん。

尤もベルちゃんは、ルーク・エヴァンス演じるガストンを袖にするくらいなので、多分大丈夫。

ガストンは素晴らしくガストンだった。ルーク・エヴァンスというのは非常に利口な顔をしている人なので、こういうバカなハンサム役ができるとはあまり思ってなかった。

歌も実に美しく…イギリスの俳優さんは芸達者ですな。

そういやルフウがガストンにほれてるゲイ設定がどうのこうのって問題になっていて、ロシアだかどこだかで上映禁止になったって聞いたんだけど、全然そんな感じなかったな…

アレでゲイがどうのこうのなんて言ってたら他の映画のが凄くないか。XMENとかXMENとかXMENだけど。

エマ・ワトソンは涙が出るほど美しかった!彼女は良いキャリアを選んだなあと思う。もう彼女をハーマイオニーといちいち結びつける人はいないだろう。とても知的で美しい女性に育った。

この映画で泣けるシーンはふたつ。

エマ・ワトソンの美しいドレス姿(黄色のやつ…というかほぼ黄色のドレス以外のドレスアップが無い)。

・野獣の悲しい歌。

ふたつあればめっけものくらい、常にハイテンション、ハイスピードな映画だったので…もうちょい情緒ってものはないのか。

タンビはなくてもいいけど、情緒ってものは。

ユアンとサー・イアンの掛け合いは最高だったけどさ、やっぱり、食事くらいゆっくり食わせてくれと思わざるを得なかった。デザートしかたぶん食わせてもらえなかった。

考えてみれば、この映画、全員ろくなものを食べていない。

コクトー版とガンズ版は食事が豪華なので、これが米英と仏の違いかねえ…。

もうちょい、もうちょい、色んなところで重厚さが欲しかった!というのがこの映画にたいする一番の感想。

つまり、監督が失敗。どんなにいい俳優揃えても、結局、監督が大事。

『美女と野獣』についての雑学(3)

ものすごく長くなってしまった。

なかなか最新版に話が辿りつかないので、たぶん辿りついたときには息切れしている(私が)。

さて、コクトー版の次はディズニーのアニメ映画版だから、ずいぶんと映像化の間が空くことになる。

まあ、コクトー版が凄かったからね…

というわけで、正直、アニメ映画版は観てません。

観てないものをあれこれいうのは私の流儀ではないので、ここはすっとばして、次の2015年公開、クリストフ・ガンズ監督による『美女と野獣』に一気に飛ぶ。

 

クリストフ・ガンズ監督は私の大好きな監督トップ5に入る…入るよね、適当に言っちゃうけど、入るんですよ、監督さんで、何がすごいってその寡作っぷり、マニアっぷり、変態っぷり、そしてオタンビ。完全にぶっとんだオタンビ。ガンズのオタンビはガンズにしか作れない、そんな特異なオタンビ監督であります。

どのくらい佳作かっていうと、まず長編デビュー作が「クライング・フリーマン」。1995年の作品。知る人ぞ知る、日本漫画の有名作品が原作。コレがとんでもないマニア向け作品で語ると長いから、今回は語らない。

2作目が「ジェヴォーダンの獣」。これは大傑作。前に語ったかもしれない。語ってなければ今すぐ語りたいくらいの大傑作だけどマニア向け。2001年。フランス人が新大陸から連れてきたインディアンと義兄弟になって獣を退治するというアクション快作。インディアン役のマーク・ダカスコスがフンドシ一丁で美しく舞う姿は最早伝説。

3作目が「サイレント・ヒル」。同名ゲームの映画化で、ゲーマーたちから熱狂的名支持を得たマニア向け作品。ゲーマーたちからは「神!神降臨!」と呼ばれた作品なれど、続編作る気無しで放置。これが2006年。

5年に一度くらいしか映画作らないってどういうことだと憤る固定ファン(私)

映画監督引退しちゃったの?と心配する新規ゲームファン。

そんな我々のやきもきを他所に4作目が2015年の『美女と野獣』…10年近く開いてんじゃねえか、働けよ!(怒)

まあ、そんなわけで何でしれっと『美女と野獣』なんだろうなーなんて思いつつ、まあガンズ先生だから好きだよね、当然好きだよねってファンは思ったわけです。

野獣大好きだもんね!(そっちだよ)

美女部分はガンズ先生、変態なんであんま興味ないんですよ。知ってる。

泥まみれにしたりするのは好きだけど、そういうのだけだよね。知ってる。

そんなガンズ先生が、ほっぺを赤くしながら(かわいい)「原点に戻るんだよ!原作の原作!超長いやつの方!」とか語ってて、こっちは本当の原作知らないんで、これがいったい原作に沿ってるのかどうか全くわからないんですけど、ガンズ版は野獣が野獣になった理由がきっちりしっかり語られています(他の部分は概ねコクトー版と同じだけど、野獣が婚約者と同じ顔になるというコクトーオリジナル部分は無し)。

城の王(ヴァンサン・カッセル!)は美しい妻と幸せに暮らしていたが、ただひとつの悪癖が狩猟だった。彼は美しい妻の再三の頼みを無視し、森に暮らす美しい鹿を追いまわし、しまいに殺してしまう。しかし殺した鹿は実は彼の妻であった。彼は森の女神である鹿を殺した罪で野獣となり、家来たちは巨大な彫像となり、犬たちは超かわいいキャラモンスターになるのであった。

え、何それ、ガンズ先生が大好きな感じじゃん…

しかもラストは木々が暴れまくり枝をのばしまくり、あーこれ、ガンズ先生が大好きな触手じゃん…あ、巨人まで出ちゃうの…

というどこまでもガンズテイストな『美女と野獣

しかしまねできないオタンビも確実に繰り広げられ、コクトー版に負けるとも劣らずの美しい画面を展開。ガンズ先生の画面はとにかく赤と青が素晴らしいんだけど、そこにフランスといえば今はこの人、なレア・セドゥが美女として降臨。まさに夢の世界。

 

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美しくてエロい世界観は圧倒的。

そして二人が恋に落ちる流れの美しさよ…ガンズ先生、もっと仕事しようよ。勿体ないよ。

 

そんなこんなで大満足して映画館を出た私に、すれ違った高校生たちのおしゃべりが聞こえてきた。

「何これ、ぜんぜんちがうー」

「意味わかんなーい」

え?何が違うって?おおよそコクトー版だし、意味わかんないってどういうこと?

訝ってネッサフしてみたら、そうか、カップが喋らず、ろうそくも沈黙していたし、誰も歌をうたわなかった!!

世の中、気付かぬあいだにディズニー版が主流になっていたのだ。

というわけで次回、ようやっと今回の『美女と野獣』を。

美女と野獣についての雑学(2)

さて、『美女と野獣』の映像化、と言えば、私にとってはなんといってもジャン・コクトーの映画。

これは影響を受けてないクリエーターはいないと思うので、『美女と野獣』の映像化におけるベースと言ってもいいと思う。

ストーリーはボーモン夫人版にほぼ忠実。

この映画、何がすごいって、CGの無い時代の特殊効果、そしてそのセンス!

さすがジャン・コクトー。時代の最先端をぶっちぎってる(たぶん、今もこの人のセンスには追いついてないから真似するしかない)。

ジャン・コクトー知らないっていう人が最近増えたのでそこからいくと、元祖マルチタレントですが、本業はたぶん詩人。

15歳で詩人として認められているので、そうとう早熟。

尤もジャン・コクトーが見出したレイモン・ラディゲ(「肉体の悪魔」の著者)は17だか18だかであれを書いて20で亡くなっているので、現在よりも早熟な社会だったのかも。

とまれ、ひと昔前といっては何だけども、私の時代には小学校の教科書にコクトーの詩が載っていた。私はそれでコクトーに嵌った。

堀口大學の訳で有名なカンヌ…(ごめん正式名称忘れた)であり、たぶんコクトー知らずとも聞いたことのある人も多いのではないかな。

「私の耳は貝の殻 海の響きを懐かしむ」

これが衝撃でね。小学生にも衝撃与えるんだから凄いんだと思うんでね、是非とも今の教科書もなんだかチャラいのばっかり載せてるみたいだけど、こういうのを載せて頂きたい。というのは置いておいて、

兎に角ジャン・コクトーというのは何でもやる人で、詩以外には小説、絵、役者、そして映画などなど。

ちなみにすごいオシャレイケメンなので写真置いておきます。この人の指は長くて美しくて有名だった。かのカルティエの三連リングは彼がラディゲに贈るために作ったという噂もあり(諸説あり)、なんとあの三連リングを小指に二個かさね付けしてしまう指の長さ!

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美女と野獣』はコクトーのミューズであった当時の超イケメン俳優ジャン・マレーが主演。ジャン・マレーについてはその美しさを三島由紀夫もたたえる文章を送っているほど。

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彫刻顔で、個人的にはコクトーの方が好みのタイプ。というのは置いておいて、

とまれ、彼が野獣メイクも当然CG無い時代だから何時間もかけて特殊メイクで演じきった。

でもこの映画のいちばん凄いところは、コクトーの美意識に裏打ちされた独自のセンス!

人の腕でできた燭台、暖炉の両脇にあつらえられた動く顔、温室に据えられた動く彫像などなど、たぶん他の映像化が真似している要素がたくさんある。

どれも独特で他に類を見ず、そしてなんといっても美しい。

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ちなみにエマ・ワトソン美女と野獣に出演するにあたって、雑誌の撮影でコクトーオマージュの写真を撮っていて、なかなか素敵だった。

違う映画なんだけど、鏡に入るシーンを、床に水槽を作ってその周りを額縁で覆い、カメラを90度傾けて、その水の中に飛び込むことで映像化するという、CG抜きの幻影術!

ご興味のある方は是非、えーっと、なんだったかな、たぶん『オルフェの遺言』だと思います(なんというウロ)

ちなみに『美女と野獣』を撮影したのは当時まだ若かったアンリ・アルカン

のちに『ローマの休日』を撮影し、白黒撮影といえばこの人!という美しい画面を撮影する人でしたが、当時はまだ駆け出し。

コクトーの『美女と野獣撮影日記』では怒られている記述あり。

しかしコクトーに叩き込まれた美のセンスはみごとに開花。

『ベルリン天使の詩』の撮影もアンリ・アルカンヴィム・ヴェンダースが白黒ならどうしてもと頼み込んで実現したそうで、実に美しい天使の視点を見せてくれます(『

ベルリン天使の詩』では天使の視点はすべて白黒)。

さて、コクトー版の『美女と野獣』映像美以外にも特筆すべき点が一箇所。

それはコクトーの解釈によって原作を改変した場所で、他のどの映像化も引き継いでいない場所があること。

コクトーはよく妖精について独自の考えを書き残しているんですが、この『美女と野獣』についても、この人から野獣、野獣から人への変化を妖精のしわざととらえていて、「単純な妖精たちは、野獣が人になったときに、ベルの彼氏ならそれがいいだろうと考えた」。

だから、ベルへの求婚者(ジャン・マレーの二役)は、ベルを救おうと野獣の城に忍び込んだところを、動く彫像に射殺され、同時にベルの愛で息を吹き返した野獣はその姿に変化してしまう。

当然、ベルはその変化が気に入らない。なぜなら彼女が愛していたのは野獣であって、求婚者ではないから。けれど、彼女はそこに着地点を見出すだけの現実性を持っている。彼女はなじみの顔へ変化した野獣に、少し嫌そうな表情をしてひとこと。

「慣れなければいけないわね」

これがラスト。

いきなり現実的かつちくりとさすような台詞で終わる『美女と野獣

いかにもコクトーらしい、美しさのなかに、遊び心とおとなの冷静さが同居した世界が味わえる映画です。

ところで、この映画のフォロワーとして、Duran Duranの3名(実質2名)のスピンオフユニットArcadiaのシングル、"Election Day"のPVが素晴らしいできなので、こちらもどうぞ。たしかArcadiaのPVは基本的にコクトーリスペクトだったと思う。

www.youtube.com

全然話が進まないので、ガンズ監督版の話は次回