イムデベ!

個人的偏見と傾向による映画・音楽・本紹介&レポ

ジャニーズの枠をぶっ壊したV6の描いた放物線の先

V6というのはジャニーズでしか存在しえないと同時に、ジャニーズの枠からは完全に外れたというより、枠を知らずぶっ壊してしまったグループだ。

常日頃、私は彼らが自分たちを「アイドル」と呼ぶのが納得いかなかった。

解散を発表したときに、年齢からして「アイドル」の引退としてきれいな終わり方だとかなんだとか世間の人たちが言うのも納得いかなかった。

V6は本人たちがどう考えていようが、事務所がどこであろうが、とっくの昔に「アイドル」ではなくなっていたと思う。

 

以下、面倒なので「と(私は)思う」を外しますが、すべて個人的な意見であることをご承知おきください。

私はそう思わない!と表明せずにいられない方は、ブラウザを閉じて回れ右。

 

アイドルは気球に乗っている。

気球に乗った家族のイラスト

 

 

手が届きそうで届かない場所でふわふわと浮いていて、

落ちることも、それ以上高くに上ることもなく、

同じ高さを浮遊している。

 

ファンは彼らが地上にいるときから、飛び立つためになにくれとなく世話を焼き、

空に昇ってからも歓声を送ることで励まし続ける。

 

ファンが多くなるほど、気球は大きく膨らみ、たくさんの人の目をひきつける。

 

だから、アイドルに対してファンは「自分たちが飛び立たせた」「成長させた」という自負を抱き、容易にファンを降りたりしない。

一方で、ある一定以上の成長を求めない。たとえそのアイドルが年を取っても、同じであることを求める。だから、熱愛だとか結婚だとか老いすらも許さず、若々しいままでいることを望む。

 

こうなると、確かにある年齢で引退しなければ先が続かないだろうということは理解できる。

同じであり続けるというのは、人である以上、非常に難しいからだ。

 

一方で、V6というグループは気球じゃなくて宇宙ロケットだった。

ロケットのイラスト

 

射出されて、高く上って行き、人がその目で見ることができなくなっても高く高くのぼっていく。

ファンが一緒に歌ったり、踊ったりできる、身近に感じられるアイドルという空をぶち破って更に高みに伸びて行く。

周回軌道に乗ることすらなく、どんどんどんどん地球から離れていくようなロケットだ。

 

ファンは稀に送られてくるメッセージに喜び、彼らが見せてくれる自分たちには見えない世界に拍手を送る。

彼らが昇っていくモチベーションにファンの声援はあまり意味を持たない。

 

V6は毎回、毎回、こんなことをやるのかとファンを驚かせてきた。

ある意味、ファンの方を向いていなかったとも言える。

ファンの声援は力になったかもしれない、物理的な支援になったかもしれない。でも、彼らの進む方向や、目指すものは彼らだけが決めていたし、彼らだけが知っていた。

 

2020年の配信ライブでファンからの「V6のことはメンバーしかわからないけど、ファンは応援する」というメッセージに岡田くんが感動していたが、実際、これまでメンバーは幾度となく「メンバーのことはメンバーにしかわからない」と発言してきた。

 

アイドルはそんなふうにファンを突き離さない。

 

私はその距離感が好きだった。アーティストとは、成長を見守ることを楽しむ存在ではなく、彼らの成果物を楽しむ存在だからだ。

 

ただ、これまでのライブで、ずっとこのまま行こうねというメッセージは何度も伝えられてきたし、トニセンがボックスダンスでもいいから踊り続けるよと言ったこともあって、ロケットが最高高度に達し、帰還するときになっても、その時なりのV6を見ていられると信じていた。

 

新作はどんどん難しいダンス、難しい曲、複雑な構成になっていった。

どこまでこのロケットは上るのだろうとただ感動していた。

まさか、パンッと消えて無くなるとは思っていなかった。

 

彼らの乗っているのが気球だったら、他のグループのようにメンバーのうちの誰かが下りても、残ったメンバーで飛び続けることもできただろう。

けれど、V6はロケットなので、誰かがもうロケットから出ていくとなれば、終わりになるしかなかった。

 

とはいえ、納得できたわけではなくて、5人で新しいロケット作ればいいじゃん!

と思った。

 

今も思ってる。

 

だって、どう考えても勿体なさすぎる。

5人で新しい活動を、今度はアイドルの肩書つけないで、もっとアーティストとしての活動をしていけばいいのに!

 

という憤りが、

悲しみが、

解散だっつーのにいまだにWA歌わされてるよというやるせなさが、

だらだら流れてどうにもならないまま、

あー、このまま解散迎えるのかなーって思ってたときにぶっこまれたのが

 

「雨」だった。

 


www.youtube.com

 

解散前の新曲で、こんなにも暗く、悲しく、雨にうたれて泥にまみれるPVをぶっこんでくるグループがV6以外にいる?

 

いないよ!

 

わかった、もう納得した。

たぶん、ロケットがぱんっと消えることを悲しんでいるのは私たちファンだけじゃないんだ。

 

V6メンバーも悲しいし、いくばくかの不安や後悔を抱えてもがいているんだ。

初めて、ファンと同じ地面の上に降りてきて、一緒に泥の上で泣いてくれているんだ。

 

あと一か月しかないし、

ラストコンには参加できないけど、

配信ライブをめいっぱい楽しみたいし、

配信ライブのあと、思いっきり悲しんでやるんだ。

二度と出ないであろう音楽性とパフォーマンスを持ったグループが、

その稀有なアーティスト性をファンしか知らないまま解散することを、

本人たちすらちゃんと気づいていないまま解散することを、

腹立たしく思いながら、

そういう気持ちの一切合切を「雨」の森に埋めようと思う。

 

いつか6人(あるいは5人)が集まって、新しいロケットに乗る日が来ることを祈りつつ。